悲願のKOC王者・ラブレターズ「優勝なんてない」の〝覚悟〟 採点に「審査員の好み」視聴者から違和感も
トップ通過したファイヤーサンダー
ファーストステージをトップ通過しながら、惜しくも3位となったのがファイヤーサンダーのこてつと崎(崎はたつさき)山祐だ。 1本目は、審査員の飯塚が大会全体でも最高点となる98点をつけて「想像もつかない設定だった」と賞賛するなど高評価を受け、合計476点を獲得。暫定1位だったロングコートダディを1点上回り首位となった。 内容は、お笑い芸人(こてつ)の毒気のある例えツッコミが軒並み事実とリンクしていることが発覚し、警察と思われる男性(崎山)からスカウトを受けるも、その人物の闇までもが明るみとなって……というもの。 芸人が写真の人物を見て「遺産相続で揉めて兄弟全員殺したんか」などとツッコむ。その内容と事実がすべて一致し、自宅を訪問してきた男性が裏の組織の工作員であることまで暴いてしまう。ラストで男性から「キミは、例えすぎた」とすごまれて芸人が慌てふためく姿は、ミステリーと笑いが入り混じる独特の見応えがあった。 続く2本目は、弱小野球部のキャプテン(こてつ)をからかっていた不良グループの少年(崎山)が日を追うごとに改心していき、最終的に大会の予選で欠員メンバーに代わって飛び入り参加し野球部を救うコント。短い暗転で時間経過を表現し、シンプルかつハートフルな世界で1本目との違いを見せた。 これに審査員の秋山は「もうちょっとほしかったですね、何かが」、じろうは「ちょっとキレイすぎる感じがしちゃった」とコメント。1本目の展開を超える面白さを期待され、むしろハードルが上がってしまったのかもしれない。 個人的には、2018年にキングオブコント王者となったハナコの2本を思い出した。1本目に岡部大がペットの犬に扮したネタ、2本目に恋人同士の追いかけっこがエスカレートしていく暗転を使ったネタで優勝したからだ。この6年で少しの隙も見せられない大会になったことを痛感させられる審査だった。
2本目で明暗分かれたロングコートダディ
今大会のトップバッターで登場し、その勢いのまま準優勝となったのがロングコートダディの堂前透と兎だ。 とくに1本目は、シンプルなシチュエーションながらアクの強いキャラクターで目を引いた。花屋にやってきた男性(兎)が、女性店員(堂前)に「彼女に花束のプレゼントをしたい」と見繕いを任せるも、「これは違いますね」「何でこんなことになっちゃったんだろう」と鼻で笑い、ことごとく店員が作った花束のセンスを否定していく。 堪えかねた店員が最初の花束をもう一度持ってきたり、「さらば肉団子サラリーマン」といった嫌味な花言葉を紹介したりして反撃。最後は男性が車に轢かれそうになった店員を助けてなお、「まだマイナスです」と返り血を浴びる姿が実に滑稽だった。 どの審査員も高く評価したが、とくに最高点96点をつけたじろうの「兎のモンスターカスタマーっぷりを堂前がツッコんじゃえば簡単なんですけど、ずっとリアルにとりあえず接客しながら、花言葉とかで返していくっていうリアルさがすごい素晴らしかった」というコメントに彼らしい審査基準を垣間見た気がした。 2本目は、岩壁に封印されたウィザード(兎)に死の呪いを解いてもらおうと青年(堂前)がやってくるも、ウィザードの話す「ルヴァロガドゥ(台の上)」といった独特な言葉がまったく理解できず、最終的に何も起こすことなく帰ってしまうコントだ。ウィザードの言葉がスクリーンに表示され、青年とのすれ違いが観客にだけわかる演出が巧みだった。 これに秋山は96点、じろう、山内は95点と高得点をつけた一方で、小峠が93点、飯塚が92点と伸びなかった。その理由について飯塚は「テレビコントとしては本当に良くできた、ずーっと面白いやり取りが続いているんですけど、やっぱり僕は兎くんが出てきてほしかった」とコメントしている。 東京03とバイきんぐは、比較的シンプルな舞台セットでネタを披露してきた。そんな2人が、演者やストーリー展開の面白さを重視するのは必然なのかもしれない。