巨大ネズミの活躍に期待 野生生物の密輸を検知、武器は鋭い嗅覚と好奇心
(CNN) 猫ほどの大きさがある巨大ネズミの「サバンナアフリカオニネズミ」。可愛いと思うかどうかは別として、地雷や結核、さらにはがれきの下敷きになった生存者までかぎ分けられる嗅覚は実証済みだ。 写真特集:猫並みの巨大ネズミ、野生生物密輸の検知に期待 タンザニアの非営利組織APOPOはこの嗅覚を、野生生物の違法取引摘発にも活用しようとしている。 年間230億ドル(約3兆5000億円)規模と推定される野生生物の違法取引は、偽造品、麻薬、人身売買に次いで世界で4番目に規模が大きい。 そうした違法取引に詳しい世界自然保護基金(WWF)のクロウフォード・アラン氏は、「特にアフリカの港湾や空港の探知方法に弱点があることを、犯罪組織は知っている」と話す。 密売業者は、例えば象牙を染色して木材のように見せかけたり、農産品の荷物の中に隠したり、チョコレート菓子に見せかけたりしてX線検査を免れようとする。 そこで活躍するのがサバンナアフリカオニネズミの鋭い嗅覚だ。学術誌に発表されたAPOPO主導の研究によると、研究施設で訓練されたネズミは象牙やサイの角、センザンコウのうろこ、アフリカンブラックウッドをかぎ分けることに成功した。いずれも主にアフリカから密輸される野生動植物だという。 ネズミは野生生物の密輸探知犬の補佐役として利用できると研究者は期待する。密集した輸送コンテナの中では「小さくてすばしこい」ネズミに部があると、プロジェクトを率いる研究者のイジー・ゾット氏は言う。 犬と違ってネズミは複数のハンドラーと組むことができ、体が小さいために訓練や飼育、輸送のコストもはるかに安い。貧困国の野生生物が違法取引の対象にされることが多い実態を考えると、これは極めて大きな意味をもつ。シンガポールやフランスも探知ネズミに関心を示しているという。 APOPOは昨年、タンザニアの国際貿易の95%を担うダルエスサラーム港で試験運用を行った。その結果ネズミたちは、臭いをごまかす常套(とう)手段が施された品目も含めて、荷物に仕込んだ目標の83%以上を発見できた。目標を探知したネズミは、特注のベストに付いた小さなボールを前足で引っ張って警報音を鳴らし、ハンドラーに知らせる。 野生生物の違法取引は、全生態系に壊滅的な影響を及ぼす可能性もある。違法取引された野生生物の消費は、エボラ、サル痘、重症急性呼吸器症候群(SARS)などのウイルス感染拡大につながるという研究もある。 ゾット氏によると、サバンナアフリカオニネズミの平均寿命は8年前後。従って1年間の訓練は長期的な投資価値がある。訓練は月曜から金曜まで。屋外の大きなケージに入れたロープのおもちゃや回し車で遊ばせる時間を定期的にはさむ。 知能の高さと好奇心の強さは学習に適している。「新しいことをさせたい時は、ただそこ(訓練用ケージ)に入れてやれば、自分でやり方を覚えてくれる」とゾット氏。 人間と同じでネズミの性格もそれぞれ違う。「1度で覚える個体もいれば、少し時間がかかるけれどいったん分かってしまえば抜群のスーパースターになる個体もいる」 研究はまだ始まったばかりだが、APOPOは今後の規模拡大に期待を寄せる。ダルエスサラームの港や空港では訓練されたネズミの試験運用を続け、長いリードを付けたネズミと自由に動き回らせたネズミの実績調査などを予定している。