鹿児島県 大作2点を徳之島町に寄贈 平和な未来を願い 独立展最高賞画家の山下さん
【徳之島】独立美術協会会員・南日本美術展委嘱作家で川内高校美術教諭の山下晴道さん(53)=鹿児島市=がこのほど、小学生時代を過ごし母親が暮らす徳之島町に対し大作2点を寄贈。同町役場玄関ホール正面に展示された。平和な未来と子どもたちの将来を託したクジラが、戦争の負の遺産を打ち壊すように雄大に泳ぐ光景と願いがインパクト豊かにアピールしている。 山下さんは母親の吉澤澄恵さん(78)が同町の母間出身で、母間小で3年生~6年生まで過ごした。武蔵野美術大学造形学部油絵学科を経て県立高美術教諭に。制作活動も並行しながら南日本美術展では海老原賞を受けて2012年~13年フランスに留学。22年には第89回独立展で最高賞の「独立賞」、翌23年に本県在住者では33年ぶり3人目の独立展会員に推挙された。 今回、徳之島町に贈った2点は『SORA`23―RAY―』と『SORA`23―SHOW―』。いずれも昨年制作した油彩F130号(162㌢×194㌢)の大作。 作品に秘めた思いについて山下さんは「クジラと雲のテーマにして約10年。生物学上、最も大きな生き物で、同時に命を持つ存在の象徴と捉えている」。直近作のテーマは「破壊され、錆(さ)び果てた80年前の戦闘機の部分は、人間史における負の象徴(戦争など)と、日常を取り巻く苦しみや悲しみも含めた」。そして「負の象徴を打ち壊すように雄大に泳ぐクジラに未来を託したい。未来を担う子どもたちの将来も願いたい」との思いを込めた。 寄贈式は10日、母澄恵さんら親族も交えてあった。山下さんは制作の意図なども交え「個人的には、高齢になった母親への親孝行の気持ちもあった」。高岡秀規町長は「徳之島が世界自然遺産に登録された自然環境の一方で、国外ではウクライナ侵攻問題なども。子どもたちにもこの絵を通して平和の大切さを感じ取ってほしい」とお礼。山下さんに感謝状を贈ってたたえた。