樋口恵子 この先「おとな用紙おむつの生産量が赤ちゃん用を超える」と言われる時代に…高齢者も<生涯現役、一消費者>として気づいたことを発言していくべし
◆軽い感動と共に それは、何かの記事で、日本の紙おむつの生産量のおとな用が急成長し、ある日赤ちゃん用を超える日が来るのではないか、という内容を読んで深く印象に残ったからでした。 「おとな用」の消費者には男性も多く、おとな用パッドを上手に利用し、外出時の失禁を気にせず活動できる、というような内容でした。 「ああ、いいことだな」と私は軽い感動と共に読みました。私が不要になったと思った生理用品は、使い方は少々違っても、もしかしたらまた出番があるかもしれない、とほほえましい気もしました。そしてこんなことも思いました。 トイレの個室の片隅に常時置かれた汚物入れ。あれが男性にも必要な日がやって来るに違いない。男性も女性も、年を取っても元気に外出できる準備がこれからもますます整備されますように――と、祈りつつ。
◆大いにパッドを利用しよう 最近のデータを見ると、おとな用パッドの売れ行きはますます好調のようです。 こうした製品は「日本製」のキメ細かさが輸出用としても好評だと何かで読んだことがあります。長寿世界一日本の実力を、多様な場面で発揮していただきたいと願っております。 でも、長年身軽で活動してきた男性が、失禁防止用のパッドを利用するには心理的抵抗がある、という話もどこかで聞きました。 そんなことありません。慣れ、です。慣れですよ。 安心パッドを利用してどこへでも出かけ、得意の業に仲間と共に腕を振るう。こんな喜びは人間にしかありません。大いにパッドを利用しながら高齢期のご活躍をお祈りします。
◆生涯現役、一消費者 私は幸か不幸かいわゆる「トイレが遠い」タチ。外出用のパッドもめったに所持していません。でも小旅行のときは別です。ほかの小物類と一緒に小さなバッグに詰め合わせます。心の中で、 「いやー、おなつかしや。人生が長くなるといろんな場面でお世話になる機会が増えますなァ」 などと心の中で声をかけながら。 人生百年時代。これまでの平均寿命から先の高齢期には、自分自身の心身の症状が変化し、それに適応した品物が必要となります。急に寿命の標準サイズが伸びましたので、私たちはこれからの高齢期で、人類が初めて使う商品の「消費者」となる場面が多くなると思います。 私は少し前から「人生百年、生涯現役、一有権者」が口癖でしたが、近ごろ「生涯現役、一消費者」であることを自覚するようになりました。消費者として気づいたことを、遠慮なくわかりやすく発言していこうではありませんか。 ※本稿は、『91歳、ヨタヘロ怪走中!』(婦人之友社)の一部を再編集したものです。
樋口恵子
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