「大戦犯だ」斎藤前知事「奇跡の大逆転」決定づけた「机叩き動画」相生市長に止まぬ批判…本当にSNS嘘情報のせい?稲村氏敗因3つのポイント
新たな兵庫県のビジョンも示すことができなかった
百条委が県職員を対象に実施したアンケートでは、斎藤氏によるパワハラを「目撃などにより実際に知っている」と回答したのは59人、「実際に知っている人から聞いた」は466人、「人づてに聞いた」は1225人に上った。さらに斎藤氏は数々の贈答品を受け取っていたことを委員から問われ、「いただいたことはある」「貸与していただいている」などと答えている。公益通報制度を踏まえず、元県民局長を「ウソ八百」と批判した上で犯人捜しや懲戒処分を加速させたのは問題だろう。数々の贈答品を受け取っていたことは斎藤氏自らが認めている。 県議会で不信任決議が議決され、失職したことに伴う今回の知事選は、本来ならば「斎藤氏以外の誰に知事を任せるか」が主な争点になるはずだ。しかし、稲村氏は「県政の停滞」の他に斎藤県政の問題点を追及することに失敗し、新たな兵庫県のビジョンも示すことができなかった。 共同通信が実施した出口調査によれば、斎藤県政を「評価する」との回答は「大いに」「ある程度」を含めて7割超に達しており、これでは勝負にならないのは当然だ。疑惑告発問題をめぐる県の対応については「評価しない」が6割近くに上っているが、投票で重視したとの回答は9%にとどまっている。稲村氏は「争点づくり」に失敗したと言えるだろう。
オールドメディアを味方につけられば、普通ならば楽勝なのに
3つ目のポイントは、「分断」のミスだ。稲村氏は選挙戦で「今回はネットがものすごく荒れる選挙戦。しかし、分断の兵庫にもしません。対立の兵庫にもしない」などと訴えていた。あれだけ斎藤氏の疑惑問題を追及していた新聞やテレビという“オールドメディア”を味方につけられれば、普通ならば楽勝できるとの読みがあったのかもしれない。 だが、今や新聞やテレビを見ない有権者は少なくない。7月の東京都知事選で予想外の得票を見せた元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏や、10月の総選挙で議席を4倍増にした国民民主党はSNS戦略が長けていた。SNSでショート動画が拡散され、若者を中心に支持が広がる。 今回の知事選においては、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首の“援護射撃”が大きかっただろう。立花氏は知事選に出馬しながらも、独自の見解で斎藤氏を応援するスタンスを見せた。YouTubeで関連動画の総再生回数は約1500万回に上ったとされる。稲村氏は「X」(旧ツイッター)のフォロワー数が約1万6000にとどまるが、斎藤氏は約25万、立花氏には約33万のフォロワーがいる。