いきなり「無保険」になって全国民が大パニック…?マイナ保険証「2025年問題」のヤバすぎる全容
国の無謀な計画のせいで
「デジタル化」とは本来、誰にとっても便利であるべきもののはずだ。だが、この国がいう「デジタル化」が、いかに不便で多くの犠牲を伴ってきたかは、これまで本コラムで何度も書いてきた。 国は、医療DXの名のもとに、すべての人に「マイナ保険証」を持たせようとしただけでなく、すべての医療機関に「オンライン資格確認」を義務付けた。 そのために、多くの診療所などが休業や廃業に追い込まれ「無医村」が増えていることについても〈導入間近「マイナ保険証」で「地方都市の医療」が崩壊してしまう…現役医師が実名で怒りの告発〉で書いた。 この「オンライン資格確認の義務化」に対し、医師・歯科医師など1415人が、義務化に反対する訴訟を国に対して起こし、その判決が11月下旬に出ることになっている。 「医療活動の自由」に対しての権利侵害を争点に、オンライン資格確認の違憲・違法性、憲法を争う裁判だが、ここで国が負ける公算は大きい。 国のお花畑のような「デジタル構想」の実現に、医師も患者も自治体も振り回され、死者まで出した今回の「マイナ保険証」のドタバタ劇も、この判決と「裏保険証」の普及で、そろそろ着地点が見えてきそうだ。 ただ、残念なのは、この「マイナ保険証」の大騒ぎで、ただでさえ遅れている日本のデジタル化が、さらに10年は遅れそうなことだ。
住基カードの二の舞
ところでみなさんは、「住基カード」の大騒ぎを覚えているだろうか。 2002年3月に「住民の利便性の向上と行政の合理化」の名のもとに出された「住基カード」は、住民にはほとんどメリットがないまま1兆円をドブに捨て、多くの自治体から訴訟を受け、普及率5%という散々な状況でトラブルだけを撒き散らして消滅した。しかも、誰も責任を取らないまま尻窄みで2015年12月に公的個人認証(電子証明書)の新規発行・更新を終了した。 多くの自治体が国を訴えた「住基ネット」の裁判から10年経ち、やっと多くの人の中から「国のデジタル化への不信感」が忘れ去られようとしている中で、再び起きたこの騒動。 結果は、「裏保険証」の普及で終わりそうだが、そのために再燃した「国のデジタル化への不信感」は、この国のデジタル化をさらに遅らせそうだ。 国際経営開発研究所(IMD)が世界64カ国・地域を対象に2017年から公表している「世界デジタル競争ランキング2023」で日本は32位。2018年には22位だった順位が年を追うごとに下がり続けている。 「マイナンバーカード」は、こうした状況を打開するためのツールのはずだった。ところが、多くの人が「デジタルの便利さ」を実感することなく「デジタル化に対する不安やためらい」を増幅させてしまった。 特に、「マイナカード」を普及させたいがために、厚生労働省の審議会も無視し、医療の現場も知らず、独断で「保険証」廃止を決めた河野太郎元デジタル大臣とデジタル庁の罪は大きい。 けれど、住基ネットの時と同様に、誰もその責任を取らない。日本のデジタル化は「不便」を撒きちらしただけで、海外から見たらますますガラバゴス化していくのだろう。 ーーー 〈話題の新NISA、実は「落とし穴」だらけ…荻原博子が「おやめなさい」と断言するワケ〉もあわせてお読みください。
荻原 博子(経済ジャーナリスト)