製品開発から顧客支援まで--AWSジャパン、流通・小売業の取り組み解説
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は11月12日、流通/小売業界における生成AI・クラウド活用のトレンドに関して勉強会を開催した。 勉強会に登壇したエンタープライズ技術本部 流通小売・消費財グループ 本部長の五十嵐建平氏は、「Amazon Web Services」(AWS)について「小売業から生まれた、小売業のためのクラウド」と評し、「小売業のAmazon.comでは進化のスピードに基盤が追随せず、お客さまからのフィードバックの反映に半年ほどかかっていた」と振り返った。 五十嵐氏は、日本の小売業が抱える課題として「労働力不足」「インフレ圧力」「消費者行動の急激な変化」「物流の規制強化」を挙げた。消費者行動の急激な変化について五十嵐氏は、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査 報告書」を引用し、2023年のEC化率が2014年の約2倍となる9.38%だった一方、世界全体と比べると半分ほどで、依然として伸び代があると説明した。具体的には、2023年の食品・飲料・酒類のEC化率は4.29%にとどまっているが、前年比の伸び率は6.52%と高いという。 同氏は「昔からの企業では店舗を持っており、店舗とECの両方を見る必要がある。複数チャネル化が求められ、経営難易度が高まっている。ここをテクノロジーで解決できないか」と提起した。 Amazon.comはECサイト「Amazon」において、AWSの生成AIを活用している。例えば、出品者が全体の傾向をつかめるよう、信頼できるユーザーの製品レビューに基づき、レビューのハイライトを表示。「使いやすさ」「安定性」など製品の特徴を示すアイコンも生成し、出品者はアイコンを選択すると関連するレビューをまとめて読める。 五十嵐氏は、メーカーを含む流通小売業の事例を紹介した。消費財(CPG)メーカーのライオンは、知識管理と情報共有に課題を認識していた中、生成AIサービス「Amazon Bedrock」や検索サービス「Amazon Kendra」を活用し、長年の研究活動で培った技術知見を活用できる仕組みを構築。「この成分を使ってみてはどうか」といった研究者の質問に対し、生成AIは「20年前に試したことがある」など、ベテラン社員のように正確かつ素早く回答することで、業務効率化が可能となった。 小売における顧客エンゲージメントの向上では、コンタクトセンターによるカスタマーサポートも重要な接点となる。オフィス家具や事務用品の製造販売を行うプラスは、クラウドコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」を導入。同社はAIを活用した音声データ分析やクラウド化による事業継続が可能になるほか、従量課金制で年間コストを約40%削減できると見込んでいる。