長崎総科大附、佐世保実の堅守に苦しめられながらも4発快勝
ともに大会初戦となった2回戦から準決勝までの3試合を全て無失点。大会優勝候補の一角、長崎総科大附と2016年に井筒和之監督が就任して9年目で初の準決勝進出を果たした佐世保実が、6月6日に雲仙市の長崎県立百花台公園サッカー場で激突した。 【フォトギャラリー】長崎総科大附 vs 佐世保実 「相手のやってくることはわかっていたので、それをどう耐えるか。そこは覚悟していたので狙い通りではありました」 試合後、佐世保実を率いる井筒監督がそう語ったとおり、佐世保実は前半から徹底した守備からのカウンターを貫き、長崎総科大附を自分たちのペースへと巻き込んだ。ゴール前では全員で密集し、体を投げ出してボールを止める。そして、ボールを持てばカウンターで1点を狙い続ける。選手の層と質、そして経験値でも長崎総科大附に劣る佐世保実が勝つとすれば、これしかないという戦いである。 これに対して、長崎総科大附は徹底的に攻めた。松下昊稀の突破を生かして左サイド深くに再三侵入し、宇土尊琉のフィードで縦を狙い、さらにはロングスロー。あの手この手で何度も佐世保実ゴールを脅かす。だが、佐世保実はほぼ自陣内に釘付けとされながらも眞弓拓也・山口桜希のCBとGK川島海央を中心に耐え、前半を0-0で折り返す。 このまま無失点の時間を長くすればあるいは・・。だが、佐世保実に漂い始めたそんな期待は後半開始早々に打ち砕かれた。左サイドを突破した長崎総科大附の田中泰平がクロスを入れると、佐世保実DFの対応が乱れた隙を逃さずに坂本錠が先制ゴール。 それでも「1点差なら想定内だった(井筒監督)」佐世保実は、前半同様の徹底した守りからカウンタースタイルを継続し長崎総科大附になお食い下がる。だが、51歩に宇土のCKから坂本が追加点。さらに疲労からスペースが生まれ始めた66分、松下のクロスから坂本がハットトリックとなる3点目のゴールを決めて3-0。 さらに、終了間際にも追加点を決めた長崎総科大附は4-0で試合を終了。佐世保実の堅守に苦しめられながらも、終わってみれば4点差をつけ長崎総科大附が明日の決勝戦進出を決定した。 「決めるべきところで決めきれないのがウチの課題。前半のチャンスを決めていれば、後半のような展開になったのに・・。ウチの未熟さですね」 試合後、長崎総科大附の定方敏和監督はそう試合を振り返った。確かに、佐世保実のプラン通りの前半になってしまった点は課題だが、それを後半に修正してチャンスを逃さず決めきるあたりは、さすがの地力と言うべきだろう。 「1月の新人戦でわれわれは国見に負けていますから、リベンジというかチャレンジャーとして挑むだけですね。失うものは何もないですから腹をくくって、『当たって砕けろ』です」 明日の決勝戦へ向け、定方監督はそう語ったが、その言葉には昨年も苦戦が続きながら見事に修正して選手権出場を掴んだ経験と自信のようなものが感じられた。やはり、今年も長崎総科大附は侮れない強豪である。 対する佐世保実は、敗れはしたものの徹底した堅守とカウンターで素晴らしい戦いを披露した。井筒監督も「今までは、成長したものをどれだけ見せられるかという大会だったが、今回は戦いながら成長したと感じられる大会だった」と手応えを感じたという。この手応えを彼らが今後どう生かすのか注目したい。 (文・写真=藤原裕久)