【旅して開運】縁起だるま発祥の地・群馬県高崎市へ
願いを込めて向かって右の目に墨を入れ、それが叶ったら左の目にも墨を入れる。そんな願掛けで知られるのが縁起だるまだ。起き上がり小法師(こぼし)と同様に底が重く、倒してもすぐに起き上がることから“七転び八起き”の縁起物にもなっている。 その発祥地にして、日本一の生産量を誇る群馬県高崎市にやって来た。まずは縁起だるま発祥の寺・少林山達磨(だるま)寺へ。1697年に開山した黄檗宗(おうばくしゅう)の名刹で、信越線群馬八幡駅から徒歩30分ほどで着く。
「今から約240年前、浅間山が大噴火して大飢饉が発生しました。9代目住職の東嶽(とうがく)和尚は苦しむ人々を救うため、この寺を開いた心越(しんえつ)禅師が描いた“一筆達磨坐禅像”を元に木型を彫り、張り子のだるま作りを農民の山縣友五郎に伝授しました。これが縁起だるまの始まりで、毎年1月6・7日に行う七草大祭で売られるようになりました」 副住職の廣瀬一真さんがその歴史を教えてくれた。授与所に並ぶ縁起だるまは、家内安全などの祈願が行われたもの。希望すれば僧侶が最初の一筆(点眼)を入れる「だるま開眼」も行っている。
参拝後、創業100年の歴史を持つ「だるまのふるさと大門屋」を訪ねた。店内にはさまざまなサイズの縁起だるまが並び、色彩も赤、白、黄など豊富だ。 「近年は日本の文化や四季を表現した季節だるまに加え、ハロウィンなどのイベントをデザインしたインバウンド向けも手がけています。いずれも顔は、眉に鶴、髭(ひげ)に亀を描く伝統的なデザインです」と4代目の会長・中田純一さん。 だるま製造は職人が分担して行うが、眉と髭の筆入れは群馬県ふるさと伝統工芸士でもある中田会長だけが行う。 コロナ禍で話題になった疫病封じの妖怪・アマビエを題材にしたアマビエだるまは、5代目の中田千尋さんが世に送り出した。最初はインスタグラムのフォロワーのリクエストに応えてこっそり作っていたが、たちまち評判になり、5万個を売り上げた。今や店の看板商品でもある。