「これは"ラグジュアリー・スーパースポーツ"といいたくなるクルマだ」 モータージャーナリストの斎藤聡がマセラティMC20チェロほか5台の注目輸入車に試乗!
外車が持つ深淵の魅力!
モータージャーナリストの斎藤聡さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! シトロエンE-C4、ヒョンデ・コナ、ジャガーIペイス、マセラティMC20チェロ、マクラーレン・アルトゥーラに乗った本音とは? 【写真21枚】モータージャーナリストの斎藤聡さんがエンジン大試乗会で乗った5台の注目輸入車の写真を見る ◆深淵の魅力 十人十色の類義語を調べてみたら、百人百様、三者三様、千差万別、人それぞれ、蓼食う虫も好き好き、という言葉がヒットした。蓼食う……はニュアンス的にどうなのか、という違和感を覚えたものの、“クルマ好き”に当てはめてみるとじつは「蓼食う……」派は案外多いような気がする。結局のところ個性だったり、メーカーの哲学のようなものに感銘・共感を覚え、ついにはその引力に引き込まれ深みにハマって……もとい深淵の魅力に囚われていく。これだけたくさんのガイシャを一堂に集めると、いかに個性豊かなクルマたちであるかというのがよくわかる。今回試乗を担当したコナ、Iペイス、e-C4はBEVだがそれぞれに個性や主張があるし、マクラーレン・アルトゥーラはハイブリッド・スーパーカーの世界観を見せてくれた。EV化の波がすなわちクルマ文化の終焉にはならないだろうと強く感じた。 ◆シトロエンE-C4シャイン「温かさが充電される」 シトロエンが好きだ。どの車に乗ってもほんわかと暖かな気分になれるところがいい。操縦安定性なんてどこの世界の話? と半ば開き直っているのではないか、と思えるほど乗り心地に全振りしているクルマ作りの姿勢も面白い。かつて油圧の塊だったシトロエンが電動化されいったいどんなクルマを作るのかと思ったら、やっぱりシトロエンだった。バッテリー残量がたっぷり残っていたので箱根までのドライブが許された。そんなわけで喜び勇んで西湘バイパスに走り出たのだった。口の悪い人からは“音振試験路”と呼ばれるこの道路だが、シトロエンは突き上げの不快さなど一切感じさせることなく、しっとりしなやかに走ってくれる。山岳路では大きめのロールを伴う。それも、しんなりとスピードに見合ったロールを見せてくれる。バッテリーをフロアに配置しているはずなのに、重心の低さを主張せずむしろ自然でナチュラルなロール感を出している。機械の性能ではなく人の感性に向き合ってクルマを仕上げているのがよくわかる。乗ると温かいものが体に充電されて元気が湧いてくる。 ◆ヒョンデ・コナ・ラウンジ2トーン 「作り手の熱で元気になる」 アイオニック5の弟分的なクルマ? そんな先入観があっただけに、実車を目の当たりにした第一印象は“意外に普通”だった。しかし、いざ走り出してみると、現代の本気度がじわじわと伝わってくる。乗り心地は角のとれたマイルドな味付けで、これにモーター駆動のなめらかな駆動フィールが加わって、上質な乗り味がある。加速に鋭さはないが、むしろこのマイルドな乗り味には、このくらいの加速がよく合っていると思う(実は日本向けは加速フィールをマイルドにチューニングしている)。走りの味付けだけでなく、前方が映る不思議なモニター“ARナビゲーション”はコナのウリの1つ。このナビと連動するスマート回生ブレーキも興味深い。レーダー追尾しながら回生ブレーキの強さをコントロールしてくれる。気になる航続距離についても、バッテリー容量64.8kWhで公称625km(ヴォヤージュ)。技術を惜しげもなく搭載している。EVの新しい標準を作ろうとしているのではないか。乗って、触ってみると、コナの作り込みに作り手の熱が感じられ、乗るほどに楽しく元気になってきた。 ◆ジャガーIペイス RダイナミックHSE「ワクワクが止まらない」 Iペイスに乗って走り出し、この日何度目か往復する西湘バイパスを淡々と走りながら、かつて都内から白馬までドライブしたことを思い出した。すこぶる快適でストレスのないドライブだった。加減速は足先の動き一つで自由自在。深くアクセレレーターを踏み込めば超絶強力な加速性能を見せてくれるし、微細なスピード・コントロールも思いのまま。東京→白馬、300km弱ある行程を無充電で行けてしまう足の長さまである。それにしても上質な乗り味だ。本来ドタンバタンと路面の継ぎ目がうるさい西湘バイパスの不快なショックを見事にいなしており、穏やかな気分になってくる。それでいて退屈しないのはどういうことなのだろう。きつい上り坂のワインディング・ロードに入り、アクセレレーターを深めに踏み込む。その瞬間、車重がふっと消えたように強力な加速Gが体を包む。カーブではバッテリーをフロアに積む重心の低さがしなやかなサスペンションを抑え込むような安定性を見せてくれる。先ほどまで穏やかだったIペイスはEVスポーツの貌を見せる。楽しい。そしてワクワクが止まらない。 ◆マセラティMC20チェロ「ラグジュアリー!」 空気がピンと張りつめたように冷たい朝イチの試乗枠。「屋根、開けますか」の問いかけに「はい」と即答するEPC会員さん。聞かなきゃよかったと半ば後悔しながら、チェロの名前のとおり空を楽しむモードに。 V6 3リッターツイン・ターボは630馬力/730Nmを発揮。どう考えたって過剰である。しかし過剰こそが有難く尊いのがスーパースポーツの世界。果たしてマセラティのお点前は。まず感心したのはボディの硬さ。ものすごく剛性感がある。多分剛性も相当高いのだと思う、その硬いボディに取り付けられたサスペンションは路面からのショックをじつにしなやかに受け止め収束させる。コーナーではしなやかに動くサスペンションが、タイヤを路面にヒタッ! と密着させ吸い付くような安定性を見せてくれる。そしてびっくりするくらい乗り心地がいい。ごつごつしたところが一切なく、エレガントなマセラティのテイストをスーパースポーツでも実現しているのだ。帰りのクローズド・ルーフのほっとする暖かさはさらに幸せだった。ラグジュアリー・スーパースポーツといいたくなるクルマだった。 ◆マクラーレン・アルトゥーラ「瞳がキラキラ!」 アルトゥーラのコクピットに収まり、クルマへの興味を隠すことなくキラキラと目を輝かせているEPC会員さんを見ながら、彼に共感する部分が自分にもあることを見つけてうれしいやら気恥ずかしいやら。 マクラーレンは、アルトゥーラを新時代に向けたスーパーカーの第一弾であり、新設計シャシーにプラグイン・ハイブリッド・システムを採用した新時代のスーパーカーとして登場させた。しかもエンジンは120度V6 3リッター電動ツイン・ターボの組み合わせ。エンジン単体出力585ps/585Nmに、薄型・軽量・高トルクの新型モーター(アキシャルモーター)を採用し95ps/225Nmを組み合わせシステム出力680ps/720Nmを発揮する。いざ走らせてみると、その運転のしやすさは想像以上。駆動用モーターのアシストで低速域から力強い走りが可能。電動ツイン・ターボのレスポンスの良さは、まるで素性のいいNAエンジンのよう、操縦性も癖がなく素直の一言。さらに言うとすべての操作系が軽い。マクラーレンは大丈夫。きっとまだまだ楽しいクルマを作ってくれるはずだ。 文=斎藤聡 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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