ハマグリに近い旨味で最高507歳まで生きる……スシローが「超長生きする無名の貝」を新メニューに加えた理由
■寿司職人は「無名の貝を寿司ネタにするなんて普通考えられない」 杉村仕入課長は「国産魚の多くが不漁の中、世界の水産物需要が高まり、円安傾向も相まって、海外産の魚も仕入れにくくなっている。そうした中で、アイスランドガイは貴重な存在。デビューから一定の人気で、貝の中では今年の“新人王”と言っても過言ではない」と手応えを感じている。 スシローでは今後、むき身で年間500トンほどのアイスランドガイを、日本を中心に香港やタイなどの店でも提供していく方向で検討しているほか、「握りのほか一品料理も考案中」という。一方、グルメグローバルでは、スシローのほか日本のスーパーなどへ、寿司ネタや海鮮丼用、総菜用としての販売に向けて、商談を進めている。 これまで日本で無名だったカナダ産アイスランドガイ。関係者に尋ねてみると、豊洲市場の有名寿司店の職人は「外国産の、しかも知らない貝を寿司ネタにすることなど、まったく考えられない。もし新種のおいしい貝があるとわかっても、握って客に出すには早くても数年を要するだろう」と話した。 北の海の水産資源に詳しい政府関係者も、この貝をほとんど知らなかった。筆者からの情報を基に、「ぜひスシローに食べに行きたい」と言っていた。グランドメニュー化されたこの秋、きっと味わったのではないかと思う。 関係者の熱意によって日本で提供されるようになったアイスランドガイ。今後にわかに、握り寿司などとして日本や海外で浸透していくことになりそうだ。 ---------- 川本 大吾(かわもと・だいご) 時事通信社水産部長 1967年、東京都生まれ。専修大学経済学部を卒業後、1991年に時事通信社に入社。水産部に配属後、東京・築地市場で市況情報などを配信。水産庁や東京都の市場当局、水産関係団体などを担当。2006~07年には『水産週報』編集長。2010~11年、水産庁の漁業多角化検討会委員。2014年7月に水産部長に就任した。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)、『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文春新書)など。 ----------
時事通信社水産部長 川本 大吾