LGBTQを肯定する高齢者施設で見た“一歩先の世界” 孤独や貧困どう解決?【記者が語るジェンダーニュース】
末岡支局長 「あと、その施設に入居されている方は60歳以上なので、まだまだLGBTQへの理解が進んでいない時代を過ごしてこられた方たちです。なので、職業差別に遭って仕事を転々とした結果、蓄えが少なくなる…という『貧困』の問題も多く、この施設は安い値段で入れるようになっているんです」 白川プロデューサー 「日本においては、明確な職業差別というよりは『LGBTQである』ということを明かしにくい状況によって、不安定な職業状況に追いやられやすいという傾向があると思います」 末岡支局長 「さらに『住居』を借りるときにも性的マイノリティーへの差別があり、なかなか家を借りづらいという状況もある。だからこそ、こういった施設がとても望まれてるという現状があるんでしょうね」 白川プロデューサー 「『恋人探しをするわけでもないのに、なぜLGBTQの人が集まって暮らす必要があるの?』と思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ、私自身もゲイの当事者ですけれども、LGBTQ当事者の課題って、決して性や恋愛だけのことではないんですね」 「例えば、家族との関係だったりとか、パートナーシップのあり方、あと『性表現』というんですけれども、どのような自分の見た目だったり、ジェンダー・アイデンティティーを表現した格好で過ごしたいかとか、どういうアイデンティティーで扱われたいか、あとHIVなどにかかっている方が一定数いらっしゃる『病気』の問題だったりとか…。人生の全てに関係する以上、高齢者施設に入った時にLGBTQであることを全て隠して、周りの入居者や、助けてくださる職員の方とコミュニケーションするのって、すごく難しい。もう24時間うそをついていなきゃいけない状況になると思うんですよね」
■LGBTQの高齢者だけでなく、さまざまな人の“居場所”になる施設
白川プロデューサー 「いろいろな課題があるというところで、取材した施設では『貧困』について、低価格で入居できるということですが、どういう背景があるんでしょうか?」 末岡記者 「実はこの高齢者施設は実額、家賃が日本円にしてだいたい6万円から9万円くらいで、1LDKくらいの部屋に入れるんです。これは、普通に借りるよりもだいぶ安くなっています。この施設を運営しているのはNPO法人で、そこに政府や州など、公的な機関からのお金の援助も入っているんですよ」 「さらに施設の中には医療機関が併設されていて、入居者だけじゃなく、近所のおじいさん、おばあさんたちも訪れていました」