叔母の面倒を一緒に看てきた叔母の妹・母が急死…相続人は全部で10人!?叔母は姪宛ての相続を希望…それでも養子縁組より公正遺言証書が得なワケ【相続の専門家が解説】
伯母の面倒は亡き母親と真理子さん家族が看てきた
伯母がひとり暮らしになってからは真理子さんの母親が毎週マンションに行ってはお金の管理や賃貸物件の管理をサポートしてきましたので、伯母は自分の財産は真理子さんの母親か、姪の真理子さんに託したと常々言ってくれていました。 真理子さんは独身で、実家で両親と同居していますので、母親が伯母さんのマンションに行くときには一緒に行き、掃除や買い物を手伝っていました。ですから伯母の発言は自然な流れだと言えます。 真理子さんの妹二人は離れたところに嫁いでいて、伯母の面倒を看る余裕がないため、伯母の意向に関しては異論はないと言います。 健在の伯父は80代と高齢で伯母のところに行くこともできず、他の代襲相続人は離れたところに住んでおり普段の行き来がないことから、今後、伯母の介護を引き受けてくれる見込みはありません。
養子縁組の申請を出していいのか?
そうしたことからも伯母の介護は母親と真理子さんが引き受けていく暗黙の了解ができていました。伯母からも母親と真理子さんに頼むと言われていますし、伯母はМさんと養子縁組してもよいとも言ってくれています。 養子縁組すれば、戸籍上、真理子さんは伯母の子どもとなりますので、きょうだいに相続権が発生することはありません。この養子縁組の申請書は伯母もМさんも記入が終わっていて、いつでも出せる状態だといいます。 この養子縁組の申請を提出したほうがいいか? ということもご質問のひとつでした。養子縁組をしない場合は、遺産分割協議が必要になりますが、人数が多いと大変です。 伯母の意思は財産は真理子さんに渡すとのことで固まっているというので、遺言書を作成する方法も取れます。
養子縁組?遺言書で遺贈?メリット・デメリット
養子縁組のメリットは、相続人がひとりになり、争いはなくなります。デメリットは相続税の基礎控除が1人分の3,600万円しかありません。 遺言書のメリットは遺産分割が不要で伯母の意思が実現できます。きょうだいしまいには遺留分の請求権がないので相続の仕方が確定できます。基礎控除は法定相続人分をカウントできるので、9,000万円のまま。デメリットは遺言書の作成に費用がかかり、証人も必要になります。 相続税がどれくらい違うか? それぞれの相続税の概算を比べてみました。 財産は9,400万円 相続人1人・養子縁組→ 相続税1,040万円 相続人10人・遺言書→ 相続税40万円 基礎控除が9,000万円あるのと、3,600万円しかないのとでは、相続税は養子になってしまうと26倍になるのです。 このように相続税を比較すると、争いを避けるためによかれと思って養子縁組をすると、思わぬ落とし穴で相続税が跳ね上がるということが想定されました。この内容を伯母にも説明し、公正証書遺言を作る方向で決まりましたので、準備を進めています。
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