NHKとテレ朝の聴取で注目、昔からあったテレビへの“圧力”と“介入”
政治からの関与があったかどうか判然としないものの、それが疑われる事例もあります。1980年代末、政界ではパチンコ業界からの献金が問題になっていました。1989年11月、当時の郵政大臣が業界から献金をもらっていたことを記者会見で認めますが、新聞各紙が1面で大きく報じる中、NHKでは突然、上層部から「この問題は報道するな」と指示があり、ニュースになりませんでした。1981年2月にはニュース特集「田中角栄の光と影」の中で、田中角栄元首相を批判したインタビューが全面カットされたことが分かっています。 ドラマでも「事件」は起きています。テレビ黎明期の人気ドラマ「判決」(NETテレビ=現テレビ朝日)のうち、1963年11月の第52話「老骨」は税金がテーマでした。ところが放送直前に中止に。その背景には、衆院選を前にして税制批判の広がりを嫌った政治的圧力があった、と言われています。「判決」は後に自民党首脳らが「反社会的で危険だ」と公然と批判するようになり、シリーズ自体が打ち切りになりました。 世論調査のカットが表面化したこともあります。1966年3月。NHKによる「国民世論調査」の最初の放送でしたが、安全保障政策に関する部分がカットされました。このとき、NHKの担当理事は「政治的対立がある場合、それを激化させ、分裂させてはいけない。それがNHKのモラル」と記者会見で述べています。
「スポンサー」のケースはどうでしょうか。やはりテレビの黎明期に著名なケースがあります。1962年に「東芝日曜劇場」(TBS系)で放送される予定だったドラマ「ひとりっ子」。次男を防衛大に行かせたい父、特攻隊で戦死した兄と同じような道に進ませたくない母。その家族の話で芸術祭参加ドラマでした。ところが放送直前、スポンサーの東芝はこの回の提供中止を制作のRKB毎日に通告。試写会も問題なく通った後の出来事でした。背景には「特攻を冒とくするな」といった右翼から東芝や防衛庁への抗議、防衛産業と関係が深かった東芝内部の態度などがあったとされています。 そのほか、1960年代には「原爆特集をやるなら番組を降りる」といった米国企業、一酸化炭素中毒事故を追った番組に対しガス会社がスポンサーを降板、人気ドラマに自動車事故の場面が出てくるため自動車会社が提供を中止、米軍撮影の東京大空襲の放送番組に対し大手商社がスポンサーを拒否……といった事例が噴出しました。