「“自己犠牲”が多いアイドルを10年間続けて」引退後の本音 彩瀬千聖「これからは自分のために生きる」その真意は?
マネジメントを務める事務所代表の冠野氏も突然のことで驚いたという。 「それまで何の素振りもなく、普通に別のミーティングの終わりに急に引退しようと思うって相談されました。そこからは、『じゃあ、2024年3月に引退ライブをしよう』と決めて、2023年の7月に引退発表したんです。ファンの皆さんにもできるだけきちんと会って感謝を伝えられる期間を設けたかったので」 引退発表から引退ライブまでの半年あまりの猶予も、これまでのライブアイドル界では珍しく、好評を得た要因のひとつだろう。
■アイドルとしての美学 数多くのアイドルがいる中で、いったいどれだけの人が「やり切った! 悔いはない」と言って引退できるだろうか。 Xを開けば日々、解雇や契約解除を伝える「大事なお知らせ」が溢れるライブアイドル界。3年以内に辞めていくアイドルがほとんどだ。 そして、辞めたかと思えば数カ月、いや数週間後には別のグループとして、活動再開をするような世界。 アイドルを引退後もアーティストやインフルエンサーとして活動する子も多い中で、彩瀬は自身ではSNSでの更新もしない、本当の意味での引退。
「節目なので、私はこの世界から離れることを選択しました。だから、このインタビュー記事が本当に最後ですね」 10年間、彩瀬千聖を支えてきたのは「自己犠牲」の上の努力と「アイドルとしての美学」なのだと、このとき気づかされた。 アイドルとはこういうもの、という彩瀬なりの答えを10年かけて表現し続けてきたのだ。 「アイドルやってきて本当によかったです! ありがとうございました!」 最後にそう答える彩瀬千聖の笑顔はアイドルそのものだったが、紡がれる言葉はアイドルではなく次の人生を生きる人の言葉であった。
最後にもう一度問う。“アイドルって何ですか?”。 「自己犠牲をいとわずアイドルであることに常に全力でいられる人たちです。個人的には23歳まで! あっ、カッコつけすぎたかな(笑)」 そう答えた彩瀬の笑顔はやはり最後の最後までアイドルそのものだった。彩瀬千聖の第二の人生も、きっとたくさんの笑顔に囲まれたものになるに違いない。 *この記事の続き:「私も一緒に辞めようかな」7年目アイドルの本音
松原 大輔 :編集者・ライター