総選挙を前に「日本企業を狙った」サイバー犯罪がさらに活性化...特に「狙われる」業界とは?
<最近では自民党の公式サイトがDDoS攻撃を受けたが、日本は日常的にサイバー攻撃の脅威にさらされている。サイバー対策の専門家が教える対策すべき点とは>【クマル・リテシュ(英MI6元幹部、サイバーセキュリティ会社CYFIRMA創設者)】
日本では自由民主党の総裁選挙が終わり、続いて衆議院議員選挙が始まっている。そんな日本政治の重要なイベントに合わせて、最近サイバー攻撃が起きていたことがわかった。 【図表】世界の移住したい国人気ランキング、日本は2位、1位は? サイバー攻撃によって政治的な活動をするハクティビスト・グループが、自由民主党の公式サイトに大量のデータを送りつけてサーバーをダウンさせるDDoS攻撃を行い、5時間以上にわたりサイトが見られなくなった。 大きなイベントの際にサイバー攻撃が実施されることは少なくない。だが先進国である日本の場合は、日常的にサイバー攻撃グループの脅威にさらされている。そこで今回から2度に分けて、直近の日本におけるサイバー攻撃情勢を解説したいと思う。 なぜ日本が狙われやすいのか。日本でも広く脅威情報やサイバー対策を展開している私の運営するサイファーマ社では、類のない規模で莫大なサイバー攻撃の関連情報を蓄積している。日本のサイバー攻撃情勢にもかなり深い知見を持っているが、サイバー脅威の観点から見てみると、日本の企業などが対策すべき点が見えてくる。 まず日本経済は、その規模と多様性により、世界的に計り知れない重要性を持っている。自動車、製造、テクノロジー、金融サービスの極めて重要な拠点として機能しており、国家型の攻撃者や金銭的動機に基づく脅威主体にとって魅力的な標的となっていると言える。また日本製品の優れた品質とメーカーの知的財産(IP)は、国家型の攻撃者にとって手に入れたい情報になっている。 ■世界最大級の日本の自動車産業を絶え間なく監視 製造業は日本のGDPに大きく貢献しており、その割合は約20%。自動車、産業用ロボット、半導体、工作機械の生産が含まれる。実際、東京を拠点とする新興企業は、急成長する世界の宇宙産業へのロボットや人工衛星の供給に乗り出しており、2040年までに1兆米ドルを超える収益を生み出すと見られている。 自動車産業も注目される。日本の自動車産業は世界最大級であり、1960年代以降、常に自動車生産国のトップ3にランクされ、ドイツをも上回っている。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などの著名メーカーをはじめ、数多くの企業が幅広い種類の自動車やエンジンを生産している。この業界は、世界中に子会社を抱えており、金銭的な利益と知的財産の窃盗に熱心な政府型のサイバー攻撃者らは、隙を狙って絶え間なく「監視」を行っている。 日本の銀行・金融業界も狙われる。日本の金融業界は、世界で最も洗練された分野のひとつである。このセクターは、日本が経済大国としての地位を確立していることを反映し、グローバルな金融に高度に統合されている。日本の銀行は国際的な資金調達や投資に大きく関与しており、デジタル決済やハイテク・ソリューションの進歩を含む革新的な金融技術の拠点でもある。サイバー攻撃者は常に標的に見据えている。