沈没漁船か、船影発見 茨城・鹿島沖転覆 業過致死疑い捜査
茨城県鹿島港の沖合でイワシ漁をしていた大津漁協(同県北茨城市)の漁船「第八大浜丸」が転覆し、2人が死亡、3人が行方不明となった事故で、現場付近の海底で沈没船とみられる影が見つかっていたことが8日、鹿島海上保安署への取材で分かった。現場の状況などから、海上保安庁では沈没船の可能性が高いとしている。海保は沈没船の特定を急ぐとともに、業務上過失致死と同往来危険の容疑を視野に捜査を進めている。 同署によると、事故現場付近で発見された船は水深200~250メートルに沈んでいた。捜索活動をしていた民間船が6日、音波によって物体を探知するソナーで見つけた。 海保は沈没船は第八大浜丸の可能性が高いとして7日、巡視船「いず」の遠隔操作型無人潜水機(ROV)で調査を実施した。しかし、水深が深くて漁網も多いため難航し、特定できなかった。 第3管区海上保安本部(神奈川県健横浜市)の巡視船のうちROVを搭載しているのは同船だけだが、作業中にROVに不具合が生じ、修理のめどは立っていないという。海保は他の調査方法も検討しているが、再開には数日かかるとみられる。 行方不明者の捜索は継続している。同署によると、8日は巡視船4隻と航空機1機を投入した。現場は波が高く、民間漁船による捜索は取りやめた。 国の運輸安全委員会は来週以降、第八大浜丸の乗組員への聞き取りを始める見込み。その後、船を所有する水産業者からも聞き取りをする。 事故は6日午前2時5分ごろ発生。鹿島港から東約31キロの沖合で第八大浜丸が転覆し、沈没した。乗組員20人のうち17人が救助されたが、50代と60代の日本人男性2人が死亡。40~70代の男性3人が海に投げ出され、行方不明となっている。 ■大型船に比べ復元力低く 鹿島沖転覆 最小の巻き網船 第八大浜丸の転覆事故が起きた6日のイワシ漁は、昨年末からの休漁期間を挟み約10日ぶりの漁だった。県旋網漁協によると、2025年の操業開始は5日午後5時以降と申し合わせていた。北海道沖から房総沖までの「太平洋北部ブロック」には、県内外の30船団がある。このうち、同5時から事故発生までに、同じ鹿島港沖の漁場で操業したのは24船団。一晩で3回操業することもあるが、この日は1回で約300トンのイワシを取って帰港する船もあった。同ブロックの巻き網漁船で大浜丸は最小だった。 同ブロックで巻き網のイワシ漁は6日朝に9300トンの水揚げがあり、うち鹿島沖に8200トンが集中していた。 大浜丸は6日午前0時14分に2回目の投網を開始。鹿島海上保安署によると、救助された乗組員は「網を引き上げる際、網に魚が多く入ったことで徐々に船体が傾いた」と話しており、魚群の重みでバランスを崩した可能性がある。 ただし漁業関係者によると、魚が過剰に入った場合には網が破けることも、意図的に網を切り魚を逃がすこともあるという。 網船の大浜丸は、網とは反対側の船体を探索船がロープで引っ張ることによって支えられる仕組みだが、転覆した。県旋網漁協への関係者からの報告によると、大浜丸が傾いて沈没しそうになった際、共倒れを防ぐために乗組員が互いの船をつなぐロープを切断したという。 同ブロックで80トン型の巻き網漁船は大浜丸1隻で、最も小型だった。以前は規制により、年間を通じてイワシ・サバ漁を行う船は80トン型に限られていた。農水省の漁業構造改革総合対策事業などにより、各社は2008年ごろから省力型漁労設備の導入などのため、より大型の船に代えていったという。大型の船の方が、傾いた船を元に戻す力(復元力)は強い。 大浜丸が建造されたのは00年8月で、同社は中古で購入していた。国交省によると、定期検査は適切に受けていた。 乗組員は水産業者「大浜漁業」(北茨城市)の従業員。県旋網漁協によると、大津漁協に加盟する業者は、イワシ漁で夏季に青森県八戸市などで操業することもあり、東北出身の乗組員が多いという。
茨城新聞社