【#佐藤優のシン世界地図探索88】トランプ革命③ 敗北した「西洋の惨状」
佐藤 併存でしょうね。なので、両国の関係は改善されます。 ――どう改善されるんですか? 佐藤 米国はウクライナから手を引き、あとはなすがままに任せます。「米国は無関係なので、ヨーロッパとロシアの間で均衡線を見つけて下さい」ということになります。 ヨーロッパは手を引けません。手を引いてしまえば、ヨーロッパまでロシアの影響が及ぶからです。そうなると簡単な話で、米国がポーランドとウクライナを推さなければ、あとはドイツ軍との力関係で自ずと均衡線が決まってきます。 ――なるほど。 佐藤 そして、現在のウクライナの最大の問題は軍事ではなく、公務員給与と年金なのです。それらが税収で賄えないため、米国が出しています。しかし、米国はもう出したくないというのが本音です。 公務員の給与と年金が国家から出なくなったらどうなりますか? ――国家崩壊であります。 佐藤 そうです。だから、ウクライナが必死になって求めている金は軍事費ではありません。すでに払えなくなっている公務員給与と年金です。ゼレンスキーの主張は「お前たちの価値観のためにやっている戦争なんだから、ウチの公務員の給料と年金を全部払え」ということですからね。 それでバイデンは責任を持とうと資金援助しています。しかし、それに対してトランプは「てめえの国の公務員給与と年金はてめえの国で稼げ」と言っているわけです。 ――米英、ポーランド、ウクライナという新しい枢軸は、「トランプ王」が現れるとそうはならない? 佐藤 なりませんね。だから、ワシントン~ロンドン~ワルシャワ~キーウ枢軸の崩壊です。 ――すると、ポーランド、フィンランド、バルト三国は滅茶苦茶焦りませんか? 佐藤 はい、焦るでしょうね。 ――東の大王様・プーチンがいらっしゃるわけでしょ? 佐藤 でも、ポーランドとバルト三国は面倒なので併合なんかしませんよ。ロシアはそこに関心がありません。 ウクライナだって、すでに必要な穀倉地帯と東部の軍算複合体はもう併合しています。あとは、黒海に面した地域を併合して、ウクライナを内陸国にすれば完成です。 ――すると、ポーランドがギャーギャー騒いでも、間にベラルーシがあるから大丈夫、ということになるのですか? 佐藤 そういうことになります。しかし、ポーランドがカリーニングラード(リトアニアとポーランドに挟まれたロシアの飛び地)を攻めたりする可能性はあります。 ――その場合は、第二次世界大戦が始まったときのように、独露で東西からポーランドに攻め入ると。