【#佐藤優のシン世界地図探索88】トランプ革命③ 敗北した「西洋の惨状」
佐藤 フランスは結局、ヨーロッパでやらないといけない事が一杯という形で、ドイツのジュニアパートナーになるでしょう。だからロシアとの関係でも、別にロシアがパリまで攻めて来ることはありません。 ――なるほど、理と利に適っています。 佐藤 そういったリアリズムをベースに、その立場で向かっていくことになるでしょうね。すると、力の均衡線で決まっていく典型的な帝国主義以外のゲームのルールに変わっていくのではないかと思います。 ――かつてのローマ帝国、イタリアはどうすれば? 佐藤 ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相とほぼ同じです。そういう意味で、プーチンとの関係も良好だし、右翼政権になっています。イタリアのジョルジャ・メローニ首相は15歳の時からファシズム運動に参加しています。 ――独伊二ヵ国同盟ですか? 佐藤 いや、イタリアは自分たちの国益を中心に動きます。だけど、ドイツのシュルツ政権はもう風前の灯ですよね。すると、やはり「ドイツのための選択肢」を担う政権が生まれる可能性があります。 ――そのこっちとは右翼政権で、ロシアの方向を向いているのですか? 佐藤 そうですね。 ――すると、ポーランドはドイツとウクライナに挟まれた怖い位置にいることになりませんか? 佐藤 大国ポーランドとしては、最初からウクライナなんてどうでもいいんですよ。対ロシア包囲網の中心にポーランドがなればよい。 ――なんと! 非情の国際関係論であります。でも、ポーランドには「自分は大国である」という変な自意識がありますが、実際には何もない。 佐藤 そう、そういうところはありますね。それにつけても、これからの欧州情勢は一層、複雑怪奇な状況になっていきますよ。 ――まさに西洋の敗北で、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する地域となりました。 佐藤 そんななかで国際政治に「トランプ王」が登場して、さらに面白くなりました。 ――確かに。 「トランプ革命④ 日本も敗北なのか? 命運を握る石破首相......」へ続く。次回の配信は2024年12月20日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生