「英語ができないと…」大学教授が語るこれからの理系学部 「生涯賃金5000万円アップ」も
連日のシャドーイング特訓
世界を舞台に活躍するには、語学力はもちろん、各国の仲間と共に学び、コミュニケーションを図る経験も有効です。 「学科がスタートした当初、留学希望者はわずかでした。少ない希望者の英語力を交換留学ができるレベルのTOEIC800点にするため、夏休みに個人特訓でシャドーイング(英語を聞いた後、即座に復唱することで英語力を鍛える訓練)を連日、行いました。特訓を経て、TOEIC300点程度から目標値に到達した学生が2人ほどおり、彼らは留学して帰国すると英語を流暢に話せるようになっていました。自信に満ちあふれた姿で、私も驚きましたし、本人たちは『留学で人生が変わった』と言っていました。卒業後、彼らは留学経験を生かし、世界的な企業で活躍しています」(檀教授) 「留学経験者が周囲の学生に与える刺激は大きいです。彼らに学内でプレゼンテーションをしてもらうと、その姿に感化された下級生たちが留学に手を挙げるようになりました。学科の3期生以降、交換留学が定着し、長期留学と短期留学を含めると学科の学生の半数近くが留学に行くようになりました」(原田准教授)
国際学会で英語で発表
同学科4年の長谷部太政(たいせい)さんは、2022年の夏から1年間、アメリカ・ミネソタ州のセントトーマス大学に交換留学しました。中央大学の研究室では、環境デザインと心理学の融合分野を学んでいます。緑化された空間から、人間の心や身体がどのような影響を受けるかを研究しています。留学先でも心理学を学びました。 「留学中は定期的にオンラインで指導教員の原田先生に状況を報告していました。学習の進捗についても聞かれるので、『しっかり勉強しなければ』といい意味で緊張感がありました」 留学を経て、英語で論文を書くことが苦にならないと感じるまでに英語力が上がりました。 「この3月に卒業した後は、中央大学の大学院理工学研究科に進む予定です。大学院でもすべて英語で学ぶ科目が多くあります。留学で培った英語力をさらに上げて、国際学会で発表する機会なども得られたらと思います」 同学科4年の藤井凛(りん)さんも、長谷部さんと同時期にカリフォルニア大学デービス校(UCデービス)に交換留学しました。中央大学の研究室では、屋外空間を設計するランドスケープアーキテクチャーを研究しており、留学先でもこの分野を軸に学びました。 「留学を考えるようになったのは入学後です。交換留学に必要なTOEFL対策のために、英単語の本を使ってイチから学びました。英語で授業を受けていたお陰で、留学先でも授業にスムーズに入ることができました」 帰国後に授業を受けると、留学前に比べて格段に英語を聞き取れるようになっていました。英文を読むスピードも飛躍的に上がっていて、自分でも驚いたと言います。 「論文を作成するときなどに、改めて『留学に行ってよかった』と実感しました。英語で書かれた論文を検索すると、関連の深い文献が沢山ヒットするし、日本語の論文と比較して信頼度の高いものが多いです。英語ができないままでいたら、『井の中の蛙』になっていたでしょう。研究を進めていくうえで、英語は文系にも理系にも必要だと思いました」 中央大学のように、理系学部での英語教育に力を入れる大学は増えています。東京都立大学理学部生命科学科英語課程では、卒業に必要な124単位のすべての授業を英語で履修します。英語に自信が持てない場合には、一部の授業だけ英語で受けて、日本語授業との組み合わせも可能です。 関西学院大学の理系3学部(理学部、工学部、生命環境学部)では主に1、2年で履修する英語科目に加え、科学技術英語、特別英語セミナー(7日間集中講義)といった、理系に特化した英語科目が履修できます。また、卒業研究科目では、外国書講読が必須となっています。留学では大学全体に提供しているプログラムに加え、理系4学部(理学部、工学部、生命環境学部、建築学部)独自の海外留学プログラムがあります。 このように理系の学部でも英語は不可欠なものになっています。将来、理系の職種に就きたい、研究者として活躍したいという人にとって、こうした大学の取り組みは大事な情報になるのではないでしょうか。
朝日新聞Thinkキャンパス