「英語ができないと…」大学教授が語るこれからの理系学部 「生涯賃金5000万円アップ」も
「英語教育」というと、文系学部のイメージが強いかもしれません。しかし、理系学部にとっても英語は必要不可欠です。英語の論文を読み、英語で論文を書き、国際学会で英語で発表することがスタンダードになりつつあるうえに、英語ができれば活躍の場は世界に広がります。英語教育に力を入れている中央大学理工学部の取り組みを紹介します。 【写真】「非英語圏」への留学、就活での反応は? フランスで学んだ女子大生の体験談
中央大学理工学部人間総合理工学科は、理工学をベースに、「人間の心と体」「人間と自然の共生」の二つのテーマを横断的に学ぶ学科です。専門分野は、水やエネルギーの関連分野から、生態学、脳科学、健康科学、環境デザインに至るまで、実に広い分野にまたがります。専任教員の8人全員、英語が堪能(外国籍や留学経験者を含む)で、専門分野を英語で学ぶ機会が豊富です。英語による授業は選択制ですが、多くの学生が英語で行われる授業を履修しています。大学院に至っては英語の授業の方が多く、すべて英語で修了することも可能です。 ただし、いきなり英語のみで授業を行うわけではありません。同学科の原田芳樹准教授によれば、英語が苦手な学生にも配慮して、英語で話した後に、その内容を日本語で繰り返すハイブリッド型からスタートします。 「高校時代に英語が得意だった学生ばかりではありません。まずは学生の中間層を基準に授業を進め、学生の理解度を確認しながら、『60%英語、40%日本語』『70%英語、30%日本語』という具合に比率を変えていきます。また希望者には、昼休みに学科教員自らが英語を教える補講的な時間を提供し、無理なくついていけるカリキュラムを作っています」(原田准教授)
理系・大学院・留学の3つで生涯賃金UP
なぜ、そこまで英語に力を入れているのでしょうか。同学科の檀一平太教授は、「2000年ごろから理系の分野では、英語ができないと研究が不可能な時代になってきた」と言います。 「研究対象がグローバル化し、研究論文の投稿先は基本的に英文誌です。優秀な学部生であれば、国際学会で発表する機会もあります。国際学会での発表は英語で行われ、質疑応答も英語です」(檀教授) 英語ができれば、就職にもメリットがあるといいます。檀教授によれば、「1年以上の長期留学により、生涯賃金が約5千万円上がる」という試算があるそうです。 「理系学部は大学院に進む人が多いですが、大学院を修了すれば生涯賃金が約5千万円アップするといわれているので、理系・大学院・留学の3つがそろえば、生涯賃金約1億円アップとなります。それだけ理系の留学経験者は、企業がほしい人材といえます」(同) 学部生に英語力をつけさせることは、大学側にとっても最重要な課題でした。そこで、2013年に人間総合理工学科を新設するにあたり、檀教授らが中心となって英語での授業を導入したり、1年次からの交換留学を積極的に勧めたりと、英語教育に力を入れることを決めました。