【山口】宇部市の長生炭鉱 水没事故から82年 初めて坑口からの潜水調査
山口朝日放送
戦時中の事故で水没した宇部市の長生炭鉱。犠牲となった労働者の遺骨の収集を目指し、30日に「坑口」からの潜水調査が行われましたが遺骨は見つかりませんでした。しかし、今後への手ごたえをつかんだようです。 宇部市の海底にあった長生炭鉱は、1942年の水没事故で朝鮮半島出身者136人を含む183人の労働者が犠牲となりました。それ以来、遺骨は海底に眠ったままです。 市民団体による遺骨収集に向けた潜水調査は、29日から本格的に始まりました。29日は海上に突き出たピーヤと呼ばれる排気口から、ダイバーが潜水調査を行いました。しかし、金属のパイプに遮られ坑道まで進めませんでした。 30日は9月に発見された炭鉱の入り口「坑口」から、内部に入り調査を行います。 【潜水調査を行ったダイバー・伊左治佳孝さん】 「過去に、ここで坑夫の人が働いていた水深30メートルぐらいのところまで行けるかどうかを、まず確認して次の調査をここからできるかを確認すること。もし途中でここで亡くなった方の遺骨があれば、ひとかけらでも回収して帰ってくる。」 ダイバーは坑口から内部に入っていきました。坑口に人が入るのは82年前の事故以来です。約40分後…。ダイバーが戻ってくると、拍手がわきおこりました。しかし、遺骨の発見にはいたりませんでした。 ダイバーの伊左治さんによると、内部は数十センチ先も見通せないほど泥で濁っていて、落ちている木片や金属部品とみられる物体を手に取ったものの、遺骨はなかったということです。ただ、遺骨を見つけられる手ごたえは得たといいます。 【潜水調査を行ったダイバー・伊左治佳孝さん】 「今回時間の問題とリール(命綱)の量の問題で帰ってきたので、まだ奥には準備をしてくれば行けるかなと思っているので、継続してやれば遺骨はここから回収できるような気はしますね。」 遺骨の収集をめざす市民団体共同代表の井上さんは、坑口に入れたことに涙を流していました。 【長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会・井上洋子共同代表】 「途中がつぶれているかと思って心配していたけど、中まで入れるってもう100メートル・200メートル入れたら必ずご遺骨はありますよ、必ずあります。それが次回か、その次か、辛抱強く安全第一にしてご遺骨にめぐりあえるときが必ずくるという確信を、きょう伊左治さんにいただきました。みなさんにも応援していただき、ここまで来ました。ありがとうございます。」 市民団体ではできるだけ早く、次の潜水調査を行いたいとしています。