「年賀状離れ」加速 郵便料金の改定がきっかけ 値上げ前に「廃止のお知らせ」を送る企業も
10月1日の郵便料金値上げをきっかけに、新年のあいさつ代わりの年賀状を見直す動きが加速しそうだ。島根県内では、値上げ前に「年賀状廃止のお知らせ」を郵送する企業もあり、印刷会社には注文取りやめの連絡が入り始めている。負担は増す一方、心のこもった1枚を出し続けようとする人もいる。 【負のスパイラル】郵便負の循環 再値上げも 全国配達網 維持へ苦境
日本郵便は、メールや交流サイト(SNS)の普及で利用減が続く郵便事業を維持するため、10月1日から郵便料金を約3割値上げした。年賀状を含むはがきは63円から85円になり、消費税の増税時を除き、1994年以来、30年ぶりの大改定となった。 値上げを受けた2025年用の年賀状の当初発行枚数は10億7千万枚。過去10年で最多だった15年用の発行枚数と比べると67・6%減り、「年賀状離れ」は歯止めがかからない状況だ。 松江市内の建設業者は9月末、得意先に年賀状の廃止を知らせるはがき約2千枚を送った。担当者は「22円の値上がりによる経費負担は大きい」と説明する。 企業や個人から、年賀状印刷の依頼が毎年約200件入る出雲市下横町のナガサコ印刷では今夏、企業から「新年のあいさつは遠慮します」と文言を加えた残暑見舞いの注文が入った。年賀状は11月以降、注文を受け付けるものの、すでに取りやめの連絡が企業から3件入ったという。
長廻光昭社長は「毎年5~10%減少している。今年は値上げの影響でもっと減るだろう」とみる。 とはいえ、新年のあいさつに当たるだけに、心を込めた一枚を送ろうという人たちもいる。松江市内4カ所で絵手紙を教え男性(81)は、今年も変わらない枚数を作る予定だ。 「スマホのメッセージにはないぬくもりが年賀状にある」と強調。例年通り100枚以上書くとなると、少なくとも2200円の負担増になるとはいえ、「引き続き、書いて楽しい、もらってうれしい1枚を投函(とうかん)したい」と話している。