注文住宅の収納計画、失敗例と改善案を3つ紹介! 収納が多いのに片付かない間取りの原因とは?
【収納計画の失敗例2】パントリーがあるのに片付かないキッチン
次の間取りでは、キッチン近くにこれだけの収納量が確保できるのは理想的に見えますが、実はこのままだと、片付かないキッチンになる可能性があります。 この間取りの「暮らしにくさ」は、キッチン背面の収納量とパントリーへの動線にありました。 人は遠くの収納より近くの収納を使いたいと考える傾向にあります。つまり、近ければ近いほど、収納としての価値が高いのです。 お使いのキッチンを見ると一目瞭然です。キッチンカウンター上には、調味料や油、洗剤などさまざまなものが置かれています。これらは「収納場所がないのでやむを得ず」ではなく、単に「近くて使いやすい」という理由で、キッチン上に置かれているはずです。 このようにキッチンから手が届く範囲の収納はとても貴重といえますが、この間取りの場合、パントリーへの動線確保のため90cm程度を動線として使っており、背面収納は1.8mしかありません。 4人家族の場合、キッチンの背面収納は2.7m程度欲しいですが、この間取りは3分の2です。 そのため、間取り全体を見直して、キッチンとパントリーを一直線に並べました。 間取り改善案:キッチンとパントリーを一直線上に キッチンを90度回転させ、背面に2.7mの収納を確保。そして、キッチン通路の延長線上にパントリーを一直線に配置しています。 この改善で、キッチン近くに収納を最大限確保した上で、大容量のパントリーも確保することができました。 ちなみに、この間取りは「理想的なパントリーの型」なので、大容量パントリーが欲しい場合に当てはめてみるとよいですね。
【収納計画の失敗例3】人気のシューズクロークが犠牲にしたもの
最後に、収納に余裕がある間取りの「盲点」について解説します。ITコンサルタントの松岡さんは、南側に公園がある敷地に、薪ストーブのある戸建て住宅を計画しています。 眺望の良さを活かした間取りで収納も多いため基本的には満足はしていましたが、一点、リビングに隣接する和室がないことが不満でした。 確かにこの間取りを眺めると、和室を配置する余裕がないように見えます。住宅会社と打ち合わせしても良い案が出てこないので、松岡さんも半分諦めていました。 しかし、間取りのコンサルティングを行った結果、松岡さん夫婦は「あまりモノを所有しないようにしている」ことがわかりました。 間取り改善案:多すぎる収納を最適化 そこで、多すぎる収納をリストラし最適化することで、和室スペースを確保することにしました。リストラしたのは「シューズクローク」「WIC」「脱衣室」です。 この3つは、松岡さん夫婦にとっては大きすぎるため縮小し、さらに動線の悪さを解消するため、回遊動線を取り入れたのがこちらの間取りです。 松岡さんの希望だった和室を家の中心に配置した上で、キッチン・パントリー・洗面室・脱衣室・浴室を一直線に並べて、家事効率を高め、家族の様子もわかるようにしました。 和室は子供の遊び場として使えるほか、水廻りに近いことから家事スペースとしても利用できます。シューズクロークは中止し、WICは小さくしましたが、松岡さん夫婦に必要な収納量は確保しました。 昨年、完成した松岡さんの家に伺いましたが、2年間暮らしてみて収納が少ないと思うことは全くないとのことでした。また、住宅会社と考えた間取りには問題が多かったため、「間取り診断を受けなかったらと思うとゾッとする」とも話されていました。 住宅会社との打ち合わせで納得いく間取りにならない場合は、知り合いの建築士や間取りのセカンドオピニオンに頼ると、問題が整理され最適な案を手に入れることができる場合もあるので、ぜひ検討してみてください。 >>船渡亮の間取り診断はこちら この間取り、ここが問題です! (講談社+α新書)
船渡亮