コスト削減・低価格が目的ではない、セブン-イレブンが掲げる独自のPB戦略とは?
第一に、商品開発にあたって、「ベンチマーク(目標/指標)」の考え方を取り入れ、客観的な商品分析に基づいて、新商品のクオリティをつくり上げている点。 第二に、商品開発はグループ各社の開発担当者であるマーチャンダイザーを結集したプロジェクト体制で進めている点。それぞれの業態や売場からの情報や商品トレンドなどの情報を共有しながら開発を進めることで、開発現場と販売現場の距離を縮めている点。 第三に、セブン・イレブンが自主商品の開発にあたって培ってきた「見える化」の手法を取り入れることで、全員が同じ視点で開発過程を共有できるようにしている点。主観に左右されやすい味においても、ベンチマークを用いた商品分析と標準化された商品開発プロセスによって、科学的に検討し、客観的に評価できる体制を作っている。 ニーズ変化への積極的な対応と市場創造にも特徴がみられる。新規商品の開発と並行して、「セブンプレミアム」は既存商品のリニューアルも積極的に行っている。少子高齢化の進展と、単身世帯の増加、女性の社会進出に伴う共働き世帯の増加など、購買行動の変化に対応するため、つねに品揃えとクオリティの見直しを続けている。また、人気商品においても、飽きられないように商品を見直している。 2010年には、ワンランク上のクオリティを目指した「セブンゴールド」ブランドをつくった。味や品質の目標水準を、「人気専門店の味」に設定し、こだわりのある上質な味わいを、手軽に家庭で再現できる商品づくりに取り組んだ。その中から生まれた人気商品が「金のハンバーグ」や「金の食パン」などである。 NB商品を上回る品質と価格帯も高い設定の商品であったが、人気商品となり、新たなマーケットを生み出すこととなった。「セブンカフェ」もコンビニコーヒーという新しい市場を開拓した。「セブンプレミアム」のクオリティ戦略は、少子高齢化社会=マーケットシュリンクという「常識」を打ち破ろうとした点で大きな変革をもたらしたといえる。 「セブンプレミアム」は、売場変革、そして新規客層の獲得にも成果を上げている。2008年に始まった小容量の冷凍食品は、セブン・イレブンに女性客層の拡大をもたらし、従来、すぐ食べられる弁当や調理パンなどを主軸としていたセブン・イレブンの売場の中で、調味料、冷凍食品などの販売機会の拡大をもたらした。「セブンプレミアム」は、売場革新もリードしてきたといえる。
塩見 英治