仲野太賀さんは「令和のバンツマに」

――仲野太賀さんの殺陣がすごかったです。 　太賀君の演じた兵士郎は、国のため、故郷のため、という今でいう右寄りな若者。その中で自分が生きる役割とは何かを考えている。今回のアクションはワイヤーなどを駆使した現代風にするよりかは、しっかりと殺陣を見せる昔ながらの剣劇映画にしたいと考えた。太賀君には「令和のバンツマ」（戦前の映画スター阪東妻三郎）になってほしいと。技術のあるスタッフも役者もいたから、その感じはすごく出ていました。

――阿部サダヲさんは。 　一番難しい役で、何を考えているか分からない。もちろん考えは決まっているけど、端からは分からないように見えなければならない。阿部さんも普段から考えが分かりづらい人だけど、その両面を表現できる。すごい信頼を寄せています。

――死地に送られた囚人たちは、どこか状況を楽しんでいるようにも見えます。 　死ぬことが予想されてたとしても、ギリギリまで結構人間って楽しいことを探すんじゃないか。実際そういう立場に置かれたら、そんなこと言ってられない、と言われるかもしれないけど、やっぱりそれがやっぱ人間の力強さなのかなと思うわけです。そういうことを描いていきたいなっていうのは、常にあります。

――白石監督作品に欠かせない音尾琢真さんは、今作でも印象深い役を演じていますね。 　本当は11人の中にいてもらいたかった。でも舞台に数か月出ることが決まっていて、「なんかもう出てきてすぐ死ぬ役でも」と言われ……。「あ、そんな役あるなあ」と。

――白石監督の作品は「痛み」がしっかり描かれる。そのこだわりは。 　登場人物が多くいて、それぞれ必死に生きている。その中で痛みも感じるし、喜びも感じるっていうところを、毎回ちゃんと描きたいと思っています。やっぱり痛みは、すごく絵が分かりやすい。映画と相性がいいです。SNSでは「こいつの映画はグロくて嫌だ」とか色々書かれもする。でも、海外で大ヒットしてるドラマや映画ってちゃんとそういうところを描いている。日本は長らくそういう映画を見せる体制がなくなってるんですけど、僕ぐらいは、と思っています。