時代劇映画「十一人の賊軍」戦場の捨て駒にされた罪人が生への執念…白石和彌監督「生き延びることが重要」
結末は笠原さんのプロットとは異なるものにした。「戦争が現実に起きる中、日本は平和だけど、未来はどうなるか分からない。どんなことがあっても生き延びることが重要という思いが伝われば」と力を込める。
音楽は松隈ケンタさん
多彩な劇中音楽で、ハードな世界観を創り出したのが、福岡市在住の音楽プロデューサー・松隈ケンタさんだ。
Jポップに本格的なロックを取り入れ、かつて人気ガールズグループ「BiSH」の楽曲を手掛けたことでも知られる。白石作品では「仮面ライダーBLACK SUN」の音楽を担当した。
今作では観客を壮絶な物語へといざなうピアノ曲や、ヒロイックな楽曲、一息つけるコミカルな曲などを提供。白石監督は「繊細かつ柔軟なアプローチで、アンチヒーローたちの美学に光を当ててくれた」と絶賛する。
「痛み」の映像化で傑出
白石監督は、悪徳刑事と暴力団との戦いを描く映画「孤狼の血」シリーズや、希代の悪役レスラー・ダンプ松本の半生をドラマ化したネットフリックス「極悪女王」などで知られ、時代の空気感や「痛み」を映像化することにかけて傑出している。今作への思いを聞いた。
――弱者や虐げられた者の視点を取り込む意図は。 弱いものの味方になりたいと思っています。今の世の中も理不尽なことがいっぱいある。例えばLGBTの人や在日の人たち。社会の問題や国の事情で苦しめられているのに、平気で「日本から出て行け」と言われる状況って何なんだと思う。
――山田孝之さんとは「凶悪」（2013年）以来のタッグですが印象は。 10年ぶりの仕事で、山田さんはその間プロデューサーや監督をやって、仕事の幅と視野を広げ、懐が深くなった。研ぎ澄まされた空気感の中で芝居してくれる人なので、「こちらも気合い入れないと最後まで乗りきれねえな」と初心に戻してもらえた。演じた政は、一番主人公らしくない主人公で、仲間を裏切る。生き残るために行動はめちゃくちゃなんだけど、シンプルに妻のところに帰りたい一心。背中の入れ墨は、龍が菩薩を守っているような絵柄で、おそらく妻と一緒になってから彫ったものだと思います。
