アジア杯イラン戦の敗因は結局なんだったのか? 福西崇史が指摘する「日本代表に足りなかったもの」
また、ロングボールを放り込む先として、板倉滉が狙われたこともポイントでした。冨安健洋よりも板倉とのマッチアップをイランが選択したということですが、これは日本の右サイドバックが積極的に上がるので、右CBと右SBにギャップができやすいというのも狙われた理由だと思います。 日本の右SBは菅原由勢であっても、毎熊晟矢であっても攻撃が持ち味で、積極的に高い位置を取ることで必然的に右サイドの裏にはスペースが生まれやすく、右CBとの距離も遠くなります。イランはそれも含めて板倉サイドを狙うことが多かったと思います。 そのリスクは日本も承知の上なので、それが分かった上でどう対応するのか。守備ラインがスライドして対応するのか、あるいはボランチがカバーするのか。板倉個人というよりも、チームとしてどうするかが足りなかったと思います。 結果的にですが、最後のPK献上はそんな日本の混乱を象徴するようなシーンだったと思います。 苦戦を強いられたもう一つの理由は、後半になってイランがプレスのかけ方を変えて、サルダル・アズムンとサマン・ゴドスが日本のCBに対してプレッシャーをかけてくるようになったことです。 それによってビルドアップで前へ効果的にボールが運べなくなり、GKへボールを戻して前へ蹴るという選択ばかりで、結局こちらは苦し紛れにロングボールを蹴らざるを得くなっていました。また、そのセカンドボールを拾うこともできず、相手へボールがわたり、また揺さぶれるという悪循環。最初の失点はまさにそんな展開からでした。 仮にそこでマイボールにできて、相手のDFと入れ替わることができれば、日本のペースになっていたかもしれません。ただ、それをするにはDFから前線の選手までの距離感が遠く、ボールが入ったとしても2列目の選手との距離も空いていたのでサポートが遅れて難しかったと思います。 苦しんだのはアンカーの遠藤航とその周りの選手との距離感が悪いことも挙げられます。CBにプレッシャーがかかっても遠藤へ縦パスを入れることができたと思います。ただ、その先のサポートの距離感が悪かったり、相手を外せる良いタイミングで動けていたわけではありません。 アンカーにパスを出してもその次のところに問題があったので、日本はビルドアップがうまくいかず、ゲームをコントロールすることができませんでした。 それはイラク戦もそうでしたが、そもそもそういった状況になったときにチームとしてどうするかという落とし込みがなされていなかったし、選手たちの判断も悪かったと思います。いずれにしてもCBにプレスがかかったときのビルドアップは、日本の大きな課題の一つとして残ったと思います。 イラン戦は現時点の日本代表の課題を浮き彫りにされた、非常に教訓となる試合だったと思います。ただ、そうした課題があったとしても日本は鈴木彩艶をはじめ、経験の浅い選手を起用しながら優勝ができるメンバーだったと思うので、非常に悔しい結果でした。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜