「音声操作のみでゲームを作成可能に」、Robloxが掲げる野心的目標
近い将来、プログラムの知識を一切持たない人が、人工知能(AI)を用いたゲームの開発エンジンに話しかけるだけで、デスクトップやモバイル向けのゲームを作れるようになるかもしれない。 「将来的には、声による操作だけで完全なゲームを作れるようになると思う」と、Roblox(ロブロックス)のチーフサイエンティストを務めるモーガン・マクガイアは、先日公開されたポッドキャスト番組『TechFirst』の中で語った。「これは、現状のゲームの作り方を一段階レベルアップさせる仕組みだ。AIがあなたの意図を受け取り、それを形にしてくれる」 ソーシャルゲームプラットフォームのロブロックスは、月間3億人以上のプレイヤーと、一日平均で8000万人のプレイヤーを抱えている。これは、競合のSteam(スチーム)の2倍、プレイステーション3倍の規模で、ユーザーは月に60億時間をロブロックスで過ごしている。 しかし、その成功を維持するためには、より多くのものが必要だ。ロブロックスには若年層のユーザーが多いため、安全性とモデレーションの強化が求められている。また、膨大なユーザーベースを抱えているが故に、新たなゲームやエクスペリエンスの開発が重要だ。さらに、さまざまな国のプレイヤーが参加しているため、異文化間のコミュニケーションの向上も求められている。 このような多様なニーズを満たすための唯一の解決策がAIだ。ロブロックスは、モデレーションや翻訳、開発などのすべての側面でAIを活用して、ゲームの開発やユーザビリティを変革しようとしている。 例えばモデレーションについて言うと、ロブロックスでは、リアルタイムの音声とチャットのコミュニケーションが45の異なる言語で行われており、毎秒5万件のテキストメッセージが送信されている。これを人間のモデレーターだけで監視することは不可能だ。また、子供や若者の多いプラットフォームは、悪用されることも多い。ロブロックスは、2023年の1年間だけで約1万3000件の児童搾取の事例を全米行方不明・搾取児童センター(NCMEC)に報告したとブルームバーグは報じている。 そのため、ロブロックスは現在、プラットフォーム上のすべてのコミュニケーションを、ニュアンスや文脈にも配慮しつつAIで監視している。マクガイアによるとAIによるモデレーションは、コスト削減の面でも有効で、今年はすでに数百万ドル規模のコスト削減を実現しており、プラットフォームの成長とともに、さらに多くの節約が見込まれるという。 「2024年第2四半期において、インフラの信頼と安全性を確保するためのコストは、前年同期から8%減少した。AIを用いたモデレーションへの移行によって、システムの安全性と統合性が向上し、インフラが最適化された」と、ロブロックスは述べている。 ■会話型AIでゲーム開発を支援 AIはまた、ゲームの開発においても不可欠だ。ユーザーが生成したコンテンツのプラットフォームであるロブロックスは、自社ではゲームを一切作らないが、「コンテンツがあるからこそ、ユーザーは当社のプラットフォームに集まってくる」とマクガイアは述べている。