「凄いボールを投げる」京都国際の“魔球左腕”など2年生の2025年ドラフト逸材が目立った甲子園…元ヤクルト編成部長は吉田輝星の“弟”大輝の潜在能力に注目
第106回全国高校野球選手権大会の決勝が23日、甲子園球場で行われ、0-0のまま決勝では初のタイブレークの延長10回にもつれこみ、京都国際が2対1で関東第一を下して初優勝を果たした。京都国際はプロ注目左腕の中崎琉生が9回を無失点に抑え、2年生左腕の西村一毅につなぐリレーで勝利したが、今大会の特徴はセンバツの登場が、楽しみな2年生に来年のドラフト候補が目立ったこと。ヤクルトで編成部長を務めてコーチとして故・野村克也氏を支えた松井優典氏が2年生の中で将来性を買ったのは、あのプロ選手の弟だった。 【リスト】2024年夏の甲子園で光った10人のドラフト逸材
開場100年目の甲子園を舞台に熱戦が繰り広げられた106回目の夏は、0-0のまま決勝では初となるタイブレークへと突入した。 無死一、二塁から始まるその10回。9回を無失点に抑えた中崎から始まる打順で京都国際の小牧憲継監督は、10回裏のマウンドに立たせる西村を代打に送った。 「打撃センスと技術」を評価している西村には「プレスをかけてくれば、バスターに切り替えていい」と伝えた。 関東第一は、初球からバントを封じるため一塁、三塁をダッシュさせる「ブルドック」を仕掛けてきた。カウント2-1からの4球目。バスターに切り替えた西村のライナー性の打球が、突っ込んできた三塁手と、カバーに入るため三塁ベース方向へ走っていた遊撃手をあざ笑うかのようにレフト前へ。続く金本祐伍が四球を選び1点、さらに三谷誠弥が右犠飛を決めて2-0とした。 その裏、西村は自らのバントの処理ミスで満塁とし、堀江泰祈のショートゴロの間に1点を失い、さらに四球を与えて満塁とされたが後続を許さず歓喜のV投手となった。 西村は“魔球”チェンジアップを操る。一度浮きあがってから落ちる落差と速度差で、打者を手玉に取るボール。今大会で4試合に登板して防御率は0.00。2回戦の新潟産大付戦、準々決勝の智弁学園戦では連続完封である。 ヤクルトの編成部長としてドラフトの指揮を執った松井氏は、「西村も成長が楽しみな来年のドラフト候補の1人」と評価する。 「チェンジアップという特殊球を持っているのが魅力。今は140キロ前後のストレートがあと3、4キロ球速がアップするようになってくれば、あのチェンジアップはさらに生きてプロでも通用すると思う。延長10回の緊張する場面でのエラーなど少し意外な面を見せたが、その経験を来年以降にどう生かすか」 松井氏は「今大会は2年生に好素材が目立った」という。 その2年生の中で評価した一人が、日ハムにドラフト1位で入団し、現在はオリックスでプレーしている吉田輝星の弟の大輝だ。1m78、85kgの右腕。2年生ながら、兄と同じ金足農のエースとして初戦の西日本短大付戦に先発。立ち上がりに自らの暴投でピンチを広げて先取点を与え、4回にも満塁から痛打されるど、結局7回を投げて5失点で負け投手となったが、最速は自己タイの146キロをマークしている。 松井氏は「凄いボールがあった」という。 「右肩が、なかなかぐっと前に出てこないので、まだいいボールと悪いボールの“ムラ”が激しい。ただボールが指にかかり、右肩も腕としっかり連動してフォーム全体のタイミングがピタッとあったときは兄の高校時代のベスト投球以上のものがある。来年このボールをコンスタントに続けることができるようになればドラフト候補にあがってくる」 松井氏が元プロスカウトの目線で今大会のドラフト候補の評価ナンバーワンとしたのは、東海大相模の1m98、96㎏の大型左腕の藤田琉生で、2番手が決勝でも救援登板し、今大会で151キロをマークしている関東第一の坂井遼だった。 3番手は報徳学園の1m88、80㎏の大型右腕、今朝丸裕喜だが、実はその次の4番手の評価が、健大高崎の1m78、75Kgの2年生右腕、石垣元気だというのだ。 初戦の英明戦では0-0で迎えた4回一死満塁から救援登板。150キロ超えのストレートを連発させ、3-2-3の併殺打に打ち取り、ピンチを脱すると、9回まで無失点ピッチングを続けた。最速は153キロを叩きだした。 「ストレートに角度があり、球威という点では、今大会で一番。まだ2年生だが3年生も含めてフラットに見ても、今大会のベスト5に入ってくる素材だと思う。この素材をより実戦での結果にどう結びつけていくかが来年の伸びしろとなってくる」