「ここはおまえらの国ではない」、入植者は叫んだ イスラエル・パレスチナの報復の連鎖、今年に入り150人以上が死亡
長年続くイスラエルとパレスチナの対立が今年に入り激しさを増している。昨年末、新たに発足したイスラエルのネタニヤフ連立政権に、対パレスチナ強硬派の極右政党が加わった影響が大きく、沈静化の兆しは見えない。イスラエル軍の武装パレスチナ人に対する急襲作戦、パレスチナ人によるイスラエル人襲撃…。 2月には数百人のユダヤ人入植者がパレスチナ人集落を襲撃、住宅や自動車に無差別に放火し焼き打ち事件の様相に。5月にはイスラエル軍とパレスチナ自治区ガザの過激派「イスラム聖戦」が空爆とロケット弾攻撃の応酬を5日間繰り広げ、ガザでは33人が死亡した。国連によると、1月以降の死者はパレスチナ側で130人以上、イスラエル側は約20人に上る。 報復の連鎖はどこまで続くのか。国際社会は双方に緊張緩和を促すが、事態は悪化の一途をたどっている。イスラエルによるパレスチナ軍事占領のあり方も問われている。(共同通信エルサレム支局 平野雄吾)
▽まるでポグロム 2月26日夜、イスラエル軍が占領するヨルダン川西岸の北部ハワラ。自宅2階から入植者による襲撃を目撃したパレスチナ人、ユスフさん(40)が振り返る。 「入植者が火炎瓶のようなものを自動車に投げ込むと、燃え始めた。路上では催涙弾が大量に投げられ、街は霧がかかったように曇った。やつらが玄関の扉をたたいたので、洗濯機をバリケードのように置いて侵入を防いだ」。襲撃は5時間以上続き、入植者は「ここはおまえらの国ではない。出ていけ」と叫んでいたという。 この日の日中、ハワラで入植者2人がパレスチナ人に銃撃され死亡、その報復だった。複数のパレスチナ人目撃者によると、午後5時ごろ、多数のイスラエル軍兵士が路上を歩き始め、店舗に営業休止を要請。約1時間後にバスなどで入植者400人以上が到着した。兵士も行動を共にしていた。数十軒の住宅や店舗、数十台の自動車が放火されたほか、投石や鉄パイプなどによる破壊もあった。中には実弾で銃撃する入植者もおり、パレスチナ人1人が死亡、約100人が負傷した。