「ここはおまえらの国ではない」、入植者は叫んだ イスラエル・パレスチナの報復の連鎖、今年に入り150人以上が死亡
外交官らのハワラ視察を企画したイスラエルの人権団体「ベツェレム」のハガイ・エルアド代表はこう語る。 「ハワラ襲撃は兵士に保護されており、入植者の暴力ではなく、国家による暴力だ。私も入植者もユダヤ人として、ポグロムがどんなものか知っている。かつての被害者が今は加害者になっている。これは何十年も続く抑圧的な占領政策の結果だ。人種差別的なアパルトヘイト政策は終わらせなくてはならない」 ▽「ハワラ消滅が必要」 現在、暴力の連鎖が続く主な舞台はヨルダン川西岸だ。1950年以降、ヨルダン統治下にあったが、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが軍事占領し、現在も軍が統治する。イスラエルはここでユダヤ人入植地を拡大、現在約130の入植地が存在し、40万人以上のユダヤ人が暮らす。 入植地とは簡単に言えば新興住宅街で、入植地建設とは新しい街の建設だ。元々西岸に暮らすパレスチナ人からすれば、住宅や農地など生活基盤を根こそぎ奪われることを意味し、当然摩擦が生じる。
ジュネーブ条約など国際法は占領地における土地や財産の没収、住民の強制移動、自国民を移住させる入植活動を禁じ、国連も重ねて「入植活動は国際法違反だ」と指摘する。国連安全保障理事会は2016年に入植活動の停止を要求する決議を採択、2021年にはパレスチナの人権を担当するマイケル・リンク特別報告者が「戦争犯罪」とまで言い切った。そもそも安保理はイスラエルによる占領地からの撤退を決議している。 しかし、イスラエル政府は決議を無視し、入植地拡大で占領を既成事実化してきた。当初はイスラエル建国運動に連なる農業開拓精神などに基づく入植者が主流だったが、近年影響力を持つのは宗教的動機の入植者だ。西岸を古代にユダヤ人が暮らした土地と見なし、神から将来にわたり与えられた「約束の地」と信じる彼らにとって、入植活動はユダヤ民族の贖罪であり、救世主到来を早める行為と映る。 そんな「民族宗教派」の入植者に支持され、昨年末発足のネタニヤフ政権に入閣したのが極右政党「ユダヤの力」党首のイタマル・ベングビール国家治安相や、極右政党「宗教シオニズム」党首のベツァレル・スモトリッチ財務相だ。パレスチナ自治政府の解体や入植地拡大、イスラエルへの西岸の一部併合を目指す。入植地拡大が彼らの存在意義ともなっている。