「日本の至宝」川村記念美術館休館に投資家の影、収蔵品売却の可能性も
特に、ロスコ、ジャクソン・ポロック、サイ・トゥオンブリーなどは1点数十億円以上と評価される可能性があるという。
DICの小峰氏は大量売却の可能性について「どう残していくのかは今後議論する。売却の可能性があるということしか言えない」と話す。すでに照会が来ているかどうかについてはコメントを控えた。
美術ファンの間からは早くも散逸を懸念する声が上がる。実業家の前澤友作氏は自身のX(旧ツイッター)で、収蔵品の海外流出を防ぎたいとし、作品購入の意向を示した。前澤氏は過去に川村記念美術館の日本画展示終了を受け、重要文化財の「烏鷺図屏風」を買い取っている。
岩渕氏は、個人的な希望として「核になる作品は残しつつ、外れるものを売却していくのが一つの考え方かと思う」と言及。「特に、ロスコの作品群は手放してほしくない。縮小するにせよ、ロスコ・ルームを含む戦後のアメリカ現代美術のコレクションがなくなると、川村のコレクションのアイデンティティーが揺らいでしまう」と訴えた。
平井氏は、今回の問題は「対話不足が一番の原因だ」と憤る。DICは株主をはじめ従業員、取引先、佐倉市、美術ファンと日ごろから自社の経営状態を含めて丁寧に対話をしておくべきだったとする。
DICの美術館に向かうバスの停留所にいた20代の会社員、神野美月さんは「休館するという話を聞いて、まだ見られるうちに行こうと思った。作品だけでなく、注目されているという建物自体も見たかった」と話し、突然の休館を惜しんだ。
【ESGウイークリー】を購読するには該当記事の冒頭にあるボタンを押して登録するか、NSUB ESG JAPANの該当する購読ボタンをクリックしてください。
--取材協力:Shery Ahn.
(c)2024 Bloomberg L.P.
Takako Taniguchi, Sarah Hilton