「お得意様」を一国に絞るのはキケン? 貿易のリスクを米中関係から読み解くと…【親子で語る国際問題】
各国の対中依存度を高め、政治的に優位な立場に
また、これと同じように欧米諸国は今日、中国がEVや鉄鋼などの過剰生産を強化していることに懸念を強めています。 市場主義、自由経済の原則に照らせば、モノを大量に製造してそれを外国に輸出することに問題はありません。しかし、経済の武器化が進む今日の世界情勢において、中国が先端技術を駆使して最新の製品を過剰に生産。諸外国の対中依存度を強めることで、政治的に優位な立場を得ようとしていることに、欧米諸国の間で懸念が広がっています。 安価な性能の良い中国製品への依存を強めれば、それによってその国は中国に対して強い要求などができなくなり、政治的、経済的に極めて脆弱な環境に陥ることが懸念されています。 今後、世界経済ではインドなどグローバルサウスの影響力が拡大します。日本企業としては、一国に多くを依存する体制から、グローバルサウスなどを含めた様々な国にリスク回避をし、輸出入先の多角化を図って長期的な安定を強化することが求められています。 ■この記事のポイント ①アメリカと中国は、軍事的な衝突を避けつつも、経済や貿易、サイバーの領域で対立を深めている ②中国は、日本や諸外国に対して、輸出入品の対中依存度を高めることで、政治的に優位な立場に立とうとしている ③日本企業は、輸出入先の多角化を図ることで、安定した体制づくりが求められている ■国際政治先生 国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
構成/国際政治先生