【オートレース】75歳でG1ファイナル進出の篠崎実「日本中のジイさんたちに、まだまだ頑張れるんだ!ということを伝えたい」…浜松G1ゴールデンレース12日に優勝戦
◇浜松オート開場68周年記念G1ゴールデンレース(4日目・11日) 基本的にシリーズ中は、同じ選手をコラムで2度取り上げることはしないようにしていますが、ここはもう、全力で我慢できません。3日目でも紹介したが、あまりにも篠崎実先生がすご過ぎて、記者としてスルーする勇気が自分には持てませんでした。 準決勝戦11R。 孫の世代まで年の離れた働き盛り、伸び盛りのレーサーを75歳のスーパーレジェンドがねじ伏せた。トップスタートを決めて、レースを先導すると、容赦なく、コテンパンに後続を払いのけた。 ここに奇跡のシニアファイナリストが誕生した。 「こんなジイさんでもやれるんだよ! もう、しばらくは辞められないな! あの金子大輔と中村雅人に勝ったんだぞ! エンジンの状態!? いいに決まっているだろ! 開けて、開けて、やっつけてやったぞ! このヤローという気持ちだけで戦ってきた! ハンデが重くなって、年寄りにはスーパーハンデだったけれど、そんなことは知ったこっちゃねえ! がはははっ」 もう、「!」マーク連発の力強すぎる口調で、勝因(?)を一気にまくし立て、吠えまくった。 75歳でG1優勝戦へ。 言葉にするのは簡単だが、この偉業がどれほどすごいことなのか。 篠崎御大が快走を決めてロッカーへとがい旋すると、あの高橋貢は周囲に集まり、祝福の声を掛ける人の輪が解ける時をたたずんで待ちわびていた。 そして、人が引け、篠崎の元に近寄ると、完全なる敬礼モードで「篠崎さん、本当におめでとうございます。すごいです…」と称賛、祝福の言葉を送った。 それを受けた篠崎は、「どうも!!」と破顔して、「あの高橋貢に褒められちゃったよ! おれ、ミツグちゃんのファンだから! ずっと前から」とまるで小学生の少年のように喜びを爆発させた。 同じくファイナル進出を果たした24歳の佐藤励は「自分は本当にこの世界に入ることができて、あまりに幸せです。もう、ずっとどこまでもオートレースをやり続けたいんですが、篠崎さんと自分と50歳以上も年齢が離れているんですよね。あと50年かあ…。え~っ、マジか!? もう、とんでもないですね~!」と自身の遠い未来を想像すらできていなかった。 75歳にもなっても、こうもはつらつと生き続けることができるのか。 佐藤ではないが、想像することすらできない。 「だからよ、おれの食生活を聞いてくれよ! ステーキとうなぎだ! 毎日、ビンビンに食っているぞ! 全然余裕だよ、そんなの! あとな、これだけは言える。元気に生きていくには、人の目なんか気にしちゃあだめなんだ! 世の中には好きな人が2割! 嫌いなやつが3割! あとは、どうでもいいやつが6割なんだよ! だから、全員を気にする必要なんてないんだよ! がはははっ」 ありがたい訓示を頂戴しましたが、篠崎さん、好きな人が2割で、そうでない人が3割、その他大勢が6割というのはいいんですが、合計すると100%を超えてしまいますが…。 「あれっ? じゃあ、嫌いなやつは2割でどうだ! これで100%になるだろ! 細かいことは気にすんなよ! がはははっ」 もう、人間を通り越して、宇宙人の世界観です。 12日には、いよいよ究極のステージが待っている。 でも、こんな言い方はどうかと思いますが、もう優勝なんてできなくたっていい。すでに、ここまでたくさんの感激をこの大偉人はオートレースファンに提供してくれたのだから。 「おれがこうして頑張って、若いやつにも勝てるということを証明できて本当にうれしいよな! おれはね、オートレースだけの話をしているんじゃない。日本中のジイさんたちに、まだまだ頑張れるんだ!ということを伝えたいんだよ! オートの世界なんて小さいよ! おれは日本のレベルで話しているんだ!」 失礼しました。スケール、違いすぎです。 そして、最後の最後までミッキー節で締めてくれた。 「取り上げて紹介してくれたお陰で、浅倉樹良クンとおそろいのメガネのことをいろいろなところで聞かれるんだ。75歳のジイさんがこのメガネで視界良好になったぞ! これだけPRしているんだから、メガネのCMオファーが来ないかな(笑い)。ヌートバー(メジャーリーガーでメガネのCMに登場)の10分の1の出演料で出てやるぞ! もう、金なんてどうでもいいんだ! みんなが喜んでくれるような走りをこれからも見せるだけだ! まだまだ全然ムリなんかしていねえよ! ムリしていなくても、これだけやれるんだ! また、みんなに参った!と言わせてやるよ! がはははっ。じゃあ、写真を撮ろうか! 格好よく撮れよ!」 どんなに性能がよろしくないカメラでも、篠崎実を格好悪く撮ることはできません。 スターは輝きが違い過ぎます。 あとは何を書けばいいですかね。 記者になって初めて「筆舌に尽くしがたい」という言葉を思い知りました。(淡路 哲雄)
報知新聞社