Z世代向けビジネスに「推し」が必要不可欠な理由とは? 「ファン」と「推し活」の違いは“好きのエネルギーの方向性”
「推し」がいるのがごく普通のこと、というZ世代。デジタルネイティブである彼ら彼女らにとって、「推し」とはどんな存在なのでしょうか。そして、企業や自治体と「推し」とのコラボをどう見ているのでしょうか。 さまざまなジャンルで「推し活」経験があり、『推し活経済』(リチェンジ)の著者でもある瀬町奈々美さんに、Z世代視点での「推し活」ビジネスについて伺いました。
【瀬町奈々美 Nanami Semachi】 推し活ビジネスアドバイザー。立教大学経営学部国際経営学科在学中。 アニメ、マンガ、Kpop、Jpopアイドル、シンガーソングライター、ボーカロイドなどさまざまな推し活を10年以上にわたり行う。 大学では研究室の仲間と立ち上げた吉本興業とのコラボキャンプイベントを成功させ、WEリーグ(日本女子サッカーリーグ)決勝大会の場外イベント、春ウィン仮装大賞の運営実行委員長などを務めた。 著書に Z世代からの視点で分析した『推し活経済:新しいマーケティングのかたち』(リチェンジ)がある。
Z世代にとっての「推し活」とは
──Z世代にとって、「推し活」とはどのようなものなのでしょうか。 瀬町 「推し活」は私たちの日常にごく自然に溶け込んでいる要素のひとつです。私の場合は、10代で嵐にはまったのをきっかけに、これまでJ-POP、K-POP、アニメ、マンガ、ボーカロイドなどさまざまな「推し活」をしてきました。同時にいくつかの「推し」を応援する「複数推し」もしています。 そんな身近な「推し活」は、自分たちにとっての精神安定剤であり、「推し活」仲間とのコミュニティーに参加するきっかけでもあります。推しの動向が自分ごとのように感じられ、自分のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)にも大きく影響しているんです。 「推し活」に熱中する同世代に対して、「推し」を持たない人は「自分も『推し活』がしたい」とうらやましい気持ちを抱いていたりもします。 私たちは中高時代から「答えのない問い」に向き合い、自分の好きなことをいかにプレゼンできるかが、大学入試でも重要とされてきている現状があります。 「夢中になることを持つ」ことが、自分の評価にもつながるという背景も、Z世代の「推し活」を後押ししているのかもしれません。 もうひとつは、精神安定剤としての「推し」の存在です。正解がひとつではないということは、心理的な不安定さを感じやすくさせる一面もあります。「推し活」は、そんな不安定なメンタルを安定させてくれる役割もあるのです。 「リアルの恋愛は疲れるから、推し活で十分」という人が一定数いるのも、それと同じことではないでしょうか。