Z世代向けビジネスに「推し」が必要不可欠な理由とは? 「ファン」と「推し活」の違いは“好きのエネルギーの方向性”
地方に住むよしもと芸人がZ世代と地方をつなぐ可能性
──瀬町さんは「よしもと『住みます芸人』」の企画にも参加した経験をお持ちです。「地方×推し活」というキーワードは、Z世代としてどのような感想を持ちましたか。 瀬町 「よしもと『住みます芸人』」は、47都道府県に吉本興業の芸人がそれぞれ住むことで、地域密着型芸人を育てるプロジェクトです。芸人との距離が近くなることで、エンタメ視点の地方創生を目指すのが目的です。 私は大学のゼミで、このプロジェクトの企画に参加し、山梨県富士川町に住む芸人・いしいそうたろうさんとキャンプイベントを企画しました。東京から学生を中心に富士川町に訪れてもらい、まちの魅力を感じてもらうという企画です。 企画を進めるなかで感じたのは、いしいさんという芸人が地元に住んでいることで、外から人を呼び込むフックになったり、まちの人たちがまとまるパワーを生み出したりしているということ。 私たちのイベントにもいしいさんのファンだというご家族が参加されていました。そういうキーパーソンの存在は、若いZ世代が地方との関係を築き、関係人口となるきっかけになるのではないか、と思います。
地方・中小企業の「推し活」は「ツッコミどころのある身近さ」で
──地方や中小企業が「推し活」で活性化するには、「推しへのリスペクト」のほかに何かあるでしょうか。 瀬町 地方や中小企業の武器は「身近さ」ですよね。情報過多の時代に育った私たちは、手の届かないものよりも、自分が手の届くものを大きく育てることに興味を引かれます。 例えば、地域の人しか知らないことを「推し活」マインドに上手につなげられたら、「自分しか知らない特別感」と「手が届く身近さ」のかけ合わせで効果を高めることができるのではないでしょうか。 いちばんレア度の高いスペシャルレアカードが組合長のおじいちゃんというのも、ツッコミどころ満載で笑えますよね。実は、こういったツッコミどころこそが「共創の隙」になると思うんです。
こういった身近さやシュールさを前面に押し出した施策は、大企業ではなかなか難しいでしょう。 中小企業や地方にこそチャレンジしがいがある部分だと思います。「あ、これは自分が関わっている情報だ」と認識しやすくなり、ファンにとって身近であるという強みを発揮できるはずです。 芸能人やキャラクターとのコラボは効果は絶大ですが、コストがかかる、一過性で終わってしまうという課題があります。地元で完結するやり方を模索するほうが、コストや労力の面でも持続性が期待できると思います。
構成・取材・文:久遠秋生 撮影:大畑陽子 イラスト:石山沙蘭 図版作成:WATARIGRAPHIC デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)