鎌倉文士・大佛次郎の邸宅が週末限定でカフェとしてオープン!
休日のお出かけ、移住先としても人気の鎌倉。地元在住エディターが案内するレストラン、カフェ、スイーツなど、とっておきの場所を紹介する連載「鎌倉ウィークエンダー」 __ 【写真】鎌倉ウイークエンダー 連載一覧 鎌倉をこよなく愛した作家、大佛次郎の別邸が、この秋に週末限定のカフェとしてオープン。かつて客人をもてなしていたという趣きのある茶亭で、とっておきの時間を過ごしてみては。
「歴史ある建物を守りたい」と継承された、茅葺き屋根のお屋敷。
参拝客でいつも賑わう鶴岡八幡宮の参道から、少し脇道に入ると、大和堀に囲まれた大きなお屋敷があらわれる。 ここは、大正から昭和にかけて活躍した作家、大佛次郎(おさらぎじろう)ゆかりの場所。 道をへだてた向かいには本宅があり、ここは別邸として来客のもてなし、交流の場として使っていた茶亭なのだそう。
実は20年前にもここは茶廊として一般に開かれていた。駅前とは別世界のような静かな空間でお茶ができる、鎌倉の中でも特別な場所として観光客にも地元の人々からも愛されてきたが、多くのファンに惜しまれつつ2019年に閉店となった。 その後、親族では維持していくのが困難となり、売却、建物の解体の危機が報じられたことも。 いよいよこの場所がなくなってしまうという時、大佛文学を愛する1人の有志が「かけがえのない文化遺産を守りたい」と手をあげ、「一般社団法人 大佛次郎文学保存会」を立ち上げて、無事に継承されることとなった。
大正10年から鎌倉に移り住み、終生を過ごしたそう。『鞍馬天狗』シリーズなどの大衆文学のほか、多様な文学作品やノンフィクション、童話や翻訳作品などを残した。
季節の花が咲く庭を眺めながらお茶を。
一年をかけて改修工事が行われた大佛邸。痛んだ箇所の修繕をメインに、ていねいに土壁を塗り替えし、表具を整えていったため、当時の趣きが保たれている。 解体された自宅の床材なども一部、大事に今の茶亭に使われているそう。大佛氏が、時を超えて我々をお客さんとして温かく迎え入れてくれているような気持ちに。 約300坪の敷地に悠々と広がる芝生の庭では、梅や桜、藤棚など、四季折々の花を楽しめる。初冬を迎え、椿のつぼみが膨らみ、水仙の花も待ち遠しい今の時期。春を待つ小さな花々を探しながら、お庭を散策してみてほしい。