大晦日興行の成否を占う11月のPRIDE東京ドーム大会。「ノゲイラ対ミルコ」の壮絶な闘い。ミルコの大晦日出場は!?
大混迷の序曲
筆者と一緒にこの試合を観戦していたスポーツライターは「ノゲイラは相当、疲弊している」と呟いた。「挽回は無理?」と筆者が訊くと「この状態で、無傷のミルコを組み伏せるのは不可能だと思う」と彼は答えた。 「じゃあ、どういう結末を予想する?」 「打撃で決まると思うんだ。左ハイは当たらないかもしれないけど、ローとミドルでダメージを与えてのTKOか大差の判定勝ち。でも、そんなに時間はかからんだろうから、判定はないかな。レフェリーが止めるだろうし」 実際、巨大スクリーンに映し出されたノゲイラの表情はやつれ切っており、口は半開きで視線も定まらず、鼻血を拭いた跡も痛々しく、“ターミネーター”の異名を取るコンプリートファイターと、再び拳を交えるようには到底見えなかった。対照的に、ミルコは涼しい表情で余裕すら感じられる。 しかし、試合は意外な結末を迎える。2R開始早々、ノゲイラが両脚タックルを試みると、ミルコはあっさりテイクダウンを許してしまう。油断をしていたとしか思えない。ノゲイラは素早くマウントポジションを取り、お返しとばかりに、パウンドを何発も落としていく。 必死で逃れようとするミルコだが、こうなってしまえば、ノゲイラにとって赤子の手を捻るようなもので、起き上がろうとするミルコの左腕をすくうと、そのまま腕ひしぎ十字固めに捕らえた。ノゲイラの大逆転勝利。何とも呆気ない幕切れである。 この敗戦は、ミルコ・クロコップのマネージメントに携わっていた川又誠矢にとっても、手痛いものとなったに違いない。大晦日興行の目玉に据えようと考えていたミルコが、実は最強ではないことが露呈したからだ。 「ノゲイラとの試合が終わったあと、ホテルの部屋で『今回は気にするな。年末に元気で帰ってこい』と元気づけました。そこでミルコに100万円を渡しているんです。彼も『すまない。ベストな状態で戻ってくるから』と約束してくれた」(川又誠矢のコメント/『新日、K-1、PRIDEタブー大全』) しかし、ミルコが戻ってくることはなかった。
細田 昌志(総合作家)