今なお色褪せない香港ノワールの最高傑作、『インファナル・アフェア』3部作の世界観に浸る至福
三部作すべてが絡み合い、それぞれの物語に続く
その後、本作は大ヒットし、主人公二人の若い頃を描いた第2作、第1作の10カ月後を描いた第3作が製作された。さらにはハリウッドが過去最高額で第1作のリメイク権を獲得。巨匠マーティン・スコセッシが監督し、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモンが主演を務めた「ディパーテッド」(06)はアカデミー賞作品賞、監督賞、編集賞、脚色賞の主要4部門を受賞した。これもオリジナル本作のクオリティの高さを証明するには十分だったと言えるだろう。 警察と犯罪組織にそれぞれ潜入を命じられた、相反する道に進む二人の運命がある時、偶然にも交錯する。雑居ビルのオーディオショップで、店番をしていたヤンと客として訪れたラウが並び、スピーカーから流れるツァイ・チン(蔡琴)の〈失われた時間(とき)〉を静かに聴く。これからの終極に向かう序曲のような名シーン。なんと絵になる二人だろう。 ちなみにこの曲は、第2作でカリーナ・ラウ扮するマフィアのボス、サムの妻マリーがエディソン・チャン扮する若きラウにも聴かせている。そう、この3部作は独立した物語でありながら、複雑に絡み合うところが憎い。
唸らされた巧みなプロット、すべては第1作から始まった…
覚せい剤取引を目論むマフィアの一斉検挙が失敗に終わったことから、双方ともに内通者の存在が明らかになる。やがてその正体を暴こうと、それぞれの世界を生き抜き、頭角を現した二人が対決する時がやってくる。第2作では、そんな過酷な運命を受け入れざるを得なかった、若き二人の主人公の秘められた過去と、彼らを取り巻く人々の事実が浮き彫りに。そして最終章となる第3作は、自身の生きる道を決めたラウの最後の孤独な戦いが始まる。 三部作の物語の終わりに、すべてが回収される爽快さ。すべてのシーンが後の彼らの物語へと続く。今回のBlu-rayで再見し、改めて気付いた発見も多かった。 初めから三部作として企画されていたのかと思いきや、続編の構想はあったものの、第2作の主人公たちの過去を描いたドラマは、ヒットしてから生まれた企画だったという。後付けながら、点を線にしていくプロットの組み立て方にも唸らされた。