<甲子園交流試合・2020センバツ32校>第4日 第3試合 仙台育英-倉敷商 みどころ
◆第4日 第3試合 仙台育英-倉敷商 8月15日 15:20 ◇みどころ 2019年秋の東北大会と中国大会を制した実力校同士の一戦は、大舞台での経験値や打力では仙台育英に分がある。倉敷商は先手を取って勝ちパターンの継投に持ち込めれば、接戦での勝負強さが生きてくる。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 仙台育英は、昨秋の公式戦チーム打率が3割8分1厘と攻撃力に秀でている。4番の入江大樹はパンチ力があり、内角球をさばくのがうまい。ただし、須江航監督は「簡単に点数を取れる相手ではない」と投手力を警戒している。 倉敷商の投手陣でポイントになるのは、先発を担う右腕・福家悠太のチェンジアップだろう。打者のタイミングを巧みにずらして打たせて取る投球に徹すれば、仙台育英打線の焦りを誘うこともできる。直球とスライダーに切れのある左腕・永野司への継投のタイミングも重要になる。梶山和洋監督は「力はうちより(仙台育英が)数倍上」と控えめだが、昨秋の公式戦のように思い切った攻めを仕掛ける可能性もある。【森野俊】 ◆仙台育英 宮城県・私立 全国大会出場回数 春13回/夏28回 ◇強打に磨き気力充実 2019年夏の甲子園8強のメンバーが7人残り、秋の東北大会では強打を前面に出して打ち勝った。東北王者に輝いたチームのスローガンは「熱夏伝承」。センバツ交流試合で3年生が集大成となる活躍を見せることで、培ってきた伝統を下級生に伝え、ファンにも感謝の思いを示したいという。 東北大会4試合で計35得点を奪った打線は上位、下位とも切れ目がない。4番の入江大樹(3年)や宮本拓実(3年)は長打力があり、主将の田中祥都(3年)は今夏から1番を担い、出塁率が高い。19年秋の公式戦でチームトップの18打点を挙げた笹倉世凪(せな、2年)は状況に応じた柔軟性のある打撃が持ち味だ。 投手陣はハイレベルな複数の投手による継投で勝負する。エースの左腕・向坂優太郎(3年)は最速140キロ超の直球やスライダーに切れがある。昨夏の甲子園で登板した左腕の笹倉、冬場に急成長した阿部恋(3年)、伊藤樹(2年)の両右腕にも期待が懸かる。 新型コロナウイルスの感染が拡大した4月から約2カ月間、全体練習を中止した。自粛期間中はウェブ会議システムでミーティングし、野球のことだけでなくコロナ禍の社会情勢についても話し合ったという。須江航監督は5月末に全体練習を再開した当時を振り返り、「プレーの質はもちろん、精神的にも強くなって帰ってきた」と話す。 過去に甲子園で準優勝3回。悲願の全国制覇を目指す舞台ではないが、同じ甲子園で試合ができることへの感謝を胸に、選手たちの気力は充実している。田中は「自分たちが甲子園で『日本一になれたチーム』だということを見せつけたい」と意気込みを語った。【滝沢一誠】 ◇沿革 1905年創立。全日制だけで生徒数3000人超の大規模校。野球部は30年創部。甲子園では89年夏、2001年春、15年夏に準優勝した。他の部活動も盛んで、昨年の全国高校駅伝では男女同時優勝を果たした。サッカーやラグビーなども全国レベル。校舎の所在地は仙台市と宮城県多賀城市。 ◆倉敷商 岡山県・県立 全国大会出場回数 春4回/夏10回 ◇力強さ増し攻撃的に 昨年夏は岡山大会決勝で敗れ、あと一歩で甲子園出場を逃した。秋季中国大会で初優勝し、8年ぶりに切符を手にした今春のセンバツは新型コロナウイルスの感染拡大で中止。「夏こそは」と闘志を燃やした選手権大会もなくなり、主将の原田将多(3年)は「甲子園は幻のような存在」と落胆の色を隠せなかったという。 それでも原田はその後、3年生の全部員に電話し、「どんな形でも最後までやり切ろう」と呼び掛けた。休校期間が明けた6月、久しぶりにグラウンドに集まった選手たちは生き生きとした表情で、プレーできる幸せをかみしめていた。 昨年8月に梶山和洋監督が就任。犠打を絡めた手堅い攻撃を伝統としてきたが、昨秋は強攻策を多用した。公式戦のチーム本塁打数は5本。中国大会では準々決勝から3試合連続で2桁安打を放ち、延長戦を2度制するなど勝負強さも発揮して頂点に立った。 力強さを増した打線の象徴は「攻撃的2番」の原田。チームトップの打率4割4分7厘、18打点をマークした。さらに、4番・福島大輝(3年)、7番・浅野大器(3年)の長打力も光る。投手陣は、多彩な変化球が持ち味で、休校期間中の自主練習で球速が増した右腕の福家悠太(3年)、切れ味鋭いスライダーが武器の左腕・永野司(2年)の継投が必勝パターンだ。 交流試合開催が決まり、原田は「本当にうれしく、甲子園に自分が立っているイメージが湧いた」と笑顔を見せ、「1試合はあっという間に終わる。濃い時間を過ごしたい」と力を込めた。相手は甲子園常連の強豪だが、梶山監督は「必ず隙(すき)があるはず。選手たちの120%の力を引き出したい」。【松室花実】 ◇沿革 1912年創立で、野球部は31年創部。センバツは85年に初出場した。甲子園での最高成績は89年夏と2012年夏の8強。OBに星野仙一さん(元楽天監督、故人)、松岡弘さん(元ヤクルト)、岡大海選手(ロッテ)ら。ウエートリフティング部や吹奏楽部も盛ん。岡山県倉敷市。 ……………………………………………………………………………………………………… ※出場回数は今春のセンバツを含む ……………………………………………………………………………………………………… ◆お知らせ ◇小冊子32人に 毎日新聞社は、2020年甲子園高校野球交流試合の開催に際し、センバツ出場決定から交流試合本番までの毎日新聞紙面をまとめた小冊子「夢の舞台へ」(上下巻)=写真=を全32の出場校ごとに製作します。この冊子を1校につき1人ずつ計32人のご愛読者さまにプレゼントします。QRコードからアクセスしてお申し込みください。8月18日締め切り。応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。問い合わせは毎日新聞社D.クリエーションセンター(03・3212・5134=平日のみ)。