雑草に隠れた苗木の位置がわかった!林業に複合現実ゴーグル 「将来の自動化へ一歩」過酷な夏場の下刈りを効率化
信州大(本部・長野県松本市)や北信州森林組合(同中野市)などは17日、現実の風景とデジタル映像を重ね合わせる複合現実(MR)の技術を、カラマツ植栽地での下刈りの省力化に生かす検討会を長野県木島平村で開いた。林業の自動化や遠隔操作化に向けた試みで、同組合の作業員が苗木の位置情報を投影するゴーグル型端末を装着して下刈りをした。 【写真】ゴーグルをかけた時に見える視界。赤く伸びた線が苗木の位置
ドローンの空撮を基にカラマツの植栽場所を計画。ゴーグル型端末の視界に植栽場所が表示されるようにした。作業員が昨秋、この端末を着けて苗木を植栽。この日の検討会では、苗木230本ほどが植わる約千平方メートルの現場で作業した。作業員は投影された位置情報を頼りに、高さ数メートルの雑草に埋もれた30センチほどの苗木を傷つけないよう刈り払い機を動かした。
同組合によると、植林地での夏場の下刈りは暑い屋外での過酷な作業を強いられ、足場の悪い急斜面ではけがの恐れもある。雑草が繁茂する中で、誤って苗木を刈らないようにするには細心の注意が必要だ。こうした負担の重さがハードルになり、各地で伐期を迎えた森林の伐採と再造林が進まない一因になっているという。
検討会は、建築木材として使える立ち木が森林にどのくらいあるかを「デジタル在庫」として把握し、建築業者に提供する仕組みの構築を目指す林野庁のモデル事業の一環。下刈りをした作業員からは「端末を装着すると視野が狭くなる」「実際の苗木と投影される位置がずれている」などの指摘が出た。信大農学部の加藤正人特任教授(森林計測・計画学)は「将来の林業自動化に向けた一つのステップにしたい」と話した。