ひっそりと歴史ロマンが眠る城 「柏原城」(後編) 山城ガールむつみ 埼玉のお城出陣のススメ
柏原城はこのような重要な戦いの舞台になったと伝わる城で、とても面白い歴史ストーリーが眠る貴重な城です。畑の中にひっそりと残る城に、驚くほどの歴史が埋もれているのです。このような人知れず今に残る城の存在と、その歴史背景を知ったときの喜びに胸を躍らせるのが、城めぐりの醍(だい)醐(ご)味(み)です。
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柏原城はほぼアップダウンもなく、城域もコンパクトなので、とても見学しやすい城です。遺構も良好に残っていて、当時の様相を想像して楽しめます。とくに、本郭と二ノ郭を隔てる堀は見応え十分です。本郭を取り巻く内側の空堀の一部で学術調査が行われていて、それによると、現況よりさらに2メートル深く掘られている形跡が確認されました。また、堀が崩れないように押さえるための版築構造も確認されています。さらに、本郭北西の一番外側の土塁の外からは、深さ約4メートルの堀が検出されていて、二重の堀が施されていた可能性があります。なお、見つかった堀は保存のために埋め戻され、現在は道路になっています。滝の城(所沢市)との類似性も指摘されていて、北条氏が後に使用したとも考えられています。柏原城の周囲の畑を眺めていると、本郭と二ノ郭の外側にさらに外郭部が存在していて、当時はもっと大きな城だったのではないか?などとの想像も膨らみ、ロマンを楽しむことができる城といえます。
■山城ガールむつみ
歴史&山城ナビゲーター。歴史コンサルタント。歴×トキ(レキトキ)代表、三浦一族研究会副会長、一般社団法人城組副理事、千葉城郭保存活用会副代表、千葉県匝瑳市シティ・アンバサダーなど。
歴史やお城をテーマにしたイベントやツアー、講座を全国各地で多数手がける。県内でも歴史と城を使った町おこし、地域活性化の取り組みや、各地の歴史発信のための御城印発行プロデュースなどを行っている。