今、注目集める公益通報制度…知事の官製談合・汚職事件をきっかけに部署設置した県でも該当ゼロ、手探り続く
今年、注目が集まった「公益通報制度」。和歌山県の通報制度を取材すると、まだ公益通報に当たると判断された内部告発は1件もなかった。新しい制度で、現場では手探りが続いているようだ。(竹内涼)
窓口は県庁にある。公益通報と判断されれば、公益通報者保護法に基づき、通報者の個人情報やプライバシーの保護を徹底する決まりだという。
県に通報を受けて調査を行う部署ができたのは、2007年度。06年に当時の知事が官製談合・汚職事件で大阪地検特捜部に逮捕されたことがきっかけだ。部署が、職員や県民から不正行為の連絡を受けてきた。
一方、同法は食品偽装やリコール隠しなど消費者の安全・安心を損なう企業不祥事が内部からの通報で次々と明らかになったことを受け、04年に公布され、06年に施行された。22年6月施行の法改正で、一定の規模の企業や行政機関に通報を受ける窓口の設置が義務づけられた。県は同法に基づいて公益通報を受けている。
県考査課によると、23年度に窓口に寄せられた知事部局に関する通報は83件だったが、公益通報に該当する職員からの情報提供はゼロだった。公益通報の判断は、同課が行う。公益通報者として保護されるためには、法令違反を具体的に示したものである必要があり、同課は「要件を満たしたケースはない」としている。
一方、知事が関係する事案に関しては、同課から監査委員に報告がされる仕組みになっている。
県議会の一般質問で、知事が関係する事案の対処について問われた岸本周平知事は「公正中立性が特に重要になる場合は、必要に応じて第三者機関による外部調査も検討する」と答えた。
贈答品の報告書は県庁で閲覧可能
知事らの贈答品の受け取りにも、厳しい視線が注がれた。
県の職員倫理規則では、知事や職員は、利害関係者から贈答品を受け取ることが禁止されている。利害関係者以外の事業者から5000円以上の贈答品を受け取ったり、供応接待を受けたりした場合には、報告書の作成が必要だ。報告書は県庁で閲覧可能で、透明性を担保している。