チェック機能を果たしていない地方議会、「否決」「修正」ともにほぼゼロ
早稲田大学マニフェスト研究所は2010年度から毎年、全国の地方議会でどのくらい議会改革が進んだかアンケート調査を実施しています。「議会改革度調査2015」では、「情報共有」「住民参加」「議会機能強化」の3つの観点に分けて、回答結果を数値化しました。その中から「議会機能強化」を取り上げます。
二元代表制の機能をフルに活かすには「バックヤードが大切」
「議会機能強化」の観点では、議会本来の権限・能力を発揮するための機能強化状況がどうなっているかということに主眼を置いています。では、議会本来の権限・能力とは何を指すのでしょう。 同研究所の中村健事務局長は「地方議会は二元代表制。例えば首長が独裁者のような人だったら、ちゃんと議会がチェック機能を働かせることができる、これが地方自治のいいところ」と話します。「議会の最大の権限は議決。そのために議会は、首長提案に対し、間違っていないか調査分析する、または対案を検討・作成する」。こうした二元代表制の機能をフルに活かすためには「バックヤードが大切」とみています。
執行部案の否決「0件」9割弱の議会
地方議会は、知事や市長といった首長が組んだ予算案や、知事部局・市長部局などの執行部が提出した各議案が適正であるか審議し、採決します。調査ではそうした議会に提出された議案に対する否決件数や、議会内の委員会がまとめた修正案提出件数について質問しました。すると、これら提出議案を否決した件数が「0件」と答えた議会は87.8%と大多数で、否決が「1件」も9.1%しかありませんでした。議会の委員会が修正案提出、あるいは議員が修正案を提出した数も「0件」がほぼ9割で、ほとんどの地方議会が執行部案をそのまま通している状況がわかりました(グラフ1)。 また、「議員間の自由討議」を設け、実績がある議会は2割にとどまり、まだ導入していないところは6割ありました。議員の質疑に対する首長や執行部の反問権は、「趣旨確認の反問権」を導入しているところは約半数(実績なしも含む)でしたが、「逆質問や反論権を含む反問権」は7割以上で導入されていませんでした。 中村事務局長は、議会がチェック機能を果たせるよう、独自に首長や執行部と違う調査分析ルートを持つためには「インターネットでも、いろんな外部知見者とのつながりでも、国会図書館との連携とかでもいい。バックヤードが首長とは違う独自の仕組みを持つことが重要」と強調します。