映画監督・本広克行 面白い作品にしたければ仲間を信じろ 〝本物のプライド〟あるからこそ、自分より優れた意見を受け入れられる
筆者は前編を拝見したが、仕事を辞めて肩書を失ったとしても、そこで終わりではなく、そこからの〝信念の貫き方〟があることを感じさせる作品になっていた。真面目なシーンだけでなく、クスッと笑えるシーンもバランスよくあって、早く続きが見たくなる面白さだ。
■お互いを認める大切さ
監督の作品には「仲間」が描かれることが多い。制作現場において、いい仲間、いいチームを作るために大切なことは「お互いが認め合っていること」だという。
「『あいつはダメ』と言う人や『俺はすげえ』と思っている人は、みんなと交われないですよね」
現場では若手スタッフが話しやすい空気、空間を作ることを大切にしている。
「誰かのことを嫌だと思っている、といったことがわかると、なるべく解決しようとしますね」
それは、若手だったころの苦い経験が原動力になっているようだ。
「若いときからテレビ業界にいると、突然いなくなったり、逃げちゃったりする人もいて、あまり他人に負荷をかけすぎるのも、自分を追い込み過ぎるのもよくないのだと考えるようになったんです。傷つけられて、いなくなってしまう人をいっぱい見てくると、自分ができることはなかったのかなって思いますね」
だからこそ映画監督になった今、「自分の作品に関わった人たちには、人気のクリエイター、俳優になって、幸せになってほしい」と願う。まさに、同シリーズの名セリフ「正しいことをしたければ、偉くなれ」を実行している〝仲間思いの人〟なのだ。
■本広克行(もとひろ・かつゆき) 映画監督。1965年7月13日生まれ、59歳。香川県出身。株式会社「Production I.G」企画部所属。92年、ドラマ「悪いこと」(フジテレビ系)で監督デビュー。映画の監督作は「踊る大捜査線」1~4(98―2012年)、「UDON」(06年)、「ブレイブ 群青戦記」(21年)など。ドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」(07年)、「ナンバMG5」(22年、共にフジテレビ系)など多くのドラマも演出し、劇場アニメ「劇場版 PSYCHO―PASS サイコパス」(15年)、「劇場版フリクリ オルタナ/プログレ」(18年)では総監督、「HUMAN LOST 人間失格」(19年)でスーパーバイザーを務めた。エンタメDAOプロジェクト「SUPER SAPIENSS(スーパーサピエンス)」の発起人として、活動を行っている。
(ペン・加藤弓子/カメラ・寺河内美奈)