戦後3回目のブーム「昭和の団地」に若い世代が続々住み替える理由とは
◇ 団地は敷地内に公園があるなど住民のつながりがほどよくある。「独居の高齢者が増えた結果、同世代でつながるようになった」と話すのは、団地暮らしの日々を描いた「ぼっち死の館」(小学館)などの作品がある漫画家の斎藤なずなさん(78)。大型団地の多摩ニュータウン(東京)に住んで40年。10年ほど前に夫を亡くしてからは一人で暮らす。近隣の入居者と声を掛け合ったり、おかずのやりとりをしたり、緩やかに支え合って生きている。鍵を預けられるような知人もいる。 「悩みがあっても共有できる。いざという時に助け合える関係性ができました」と言う。 照井さんは、「今後は、広場など屋外の空間を使いこなして近隣の住民との人間関係を築き直そうとする人が若い世代を中心に出てくるだろう。団地暮らしは新しいライフスタイルとして定着する可能性がある」とみている。
自治体などが団地の再生に力
「団地ブーム」の1回目は庶民の憧れの住宅として注目された高度経済成長期で、1960年頃から始まった。2回目は住宅価格が高騰する中、手が届きやすかった1980~90年代のバブル経済期で、3回目が現在だ。 UR都市機構と無印良品は共同で各地でリノベーションに取り組むなど、古くなった団地を再生する例が増えている。自治体などは地域の大学と連携し、住民同士がつながる居場所作りとして、再生に力を入れ始めている。 ◇ 少々の古さや不便さは受け入れ、時に逆手にとって楽しみ、アイデアを足す。記者は団地に住んだことはないが、団地ならではの魅力が再発見できた。(読売新聞生活部 上原三和)