史上最高のNHK大河ドラマは…? 歴代で最も面白い名作(1)幕末の英雄の真実は…社会現象級ヒットの理由は?
日本ドラマ作品の代表格といえばNHKの大河ドラマ。第1作『花の生涯』(1963)より連綿と受け継がれるシリーズであり、主人公の人生と歴史のうねりを1年かけて描く大河ドラマは、視聴者の記憶に、より深く刻み込まれる。今回は、数ある作品の中でも名だたる名作を5本セレクト。作品の魅力を解説しながらご紹介する。第1回。(文・寺島武志)
『龍馬伝』(2010)
主人公:坂本龍馬 放送期間:2010年1月3日~11月28日 脚本:福田靖 最高視聴率:24.4% 主演:福山雅治 【作品内容】 明治15年(1882年)、郵便汽船三菱社長・岩崎弥太郎(香川照之)は、地元高知の新聞記者から郷土の埋もれた維新志士・坂本龍馬についての取材を申し込まれる。弥太郎は、「この世で一番嫌いな男」と言いながら、坂本龍馬という男について語り始める…。 土佐藩、高知城下に町人郷士・坂本家の次男として生まれた坂本龍馬(福山雅治)は、やがて土佐藩を脱藩。その後、幕臣・勝海舟(武田鉄矢)との出会いで龍馬の運命は大きく動き出す。海援隊を作り、対立していた薩摩藩と長州藩の間を調停し、薩長同盟の締結に尽力。さらには大政奉還を画策し、明治維新を進める大活躍をしたが、何者かに暗殺され、33歳で短い人生の幕を閉じる。 【注目ポイント】 福山雅治演じる坂本龍馬を主人公にした本作。土佐に生まれた一介の素浪人が、武市半平太(大森南朋)や勝海舟らとの出会いを経て、幕末の動乱期を駆け抜けていく姿が、経済人・岩崎弥太郎の視点で描かれている。 龍馬といえば、「薩長同盟の実現に尽力した」や「明治維新を進める原動力」といった言葉で語られる。しかしそれは、1963年に司馬遼太郎が発表した小説『竜馬がゆく』のイメージに拠るところが多く、日本史にさほど影響を与えなかったと考える論者も多く、一時は教科書からもその名が消えかかったともいわれている。 本作も、独り歩きする龍馬のイメージを存分に活用している。何と言っても龍馬とは因縁浅からぬ仲である岩崎弥太郎を語り部にするという手法が利いている。主役に福山雅治を起用することによって、女性からの支持も獲得した。 脇を固めるキャスト陣にも、龍馬の同志・岡田以蔵役には佐藤健を、龍馬の幼馴染の土佐藩地下浪人にして、後に三菱財閥を築いた岩崎弥太郎役に香川照之を起用するなど、実力派を揃え、見応えのあるドラマに仕立てたことが、ヒットに繋がった。
寺島武志