重労働の「除雪」から100万円で解放されるかも!? シニアカーなどと同等扱いの「小型除雪ドローン」に期待大
高齢者を雪かきの重労働から解放するドローン
2024年の「ジャパンモビリティショー」は、従来までのユーザー向けのB to Cイベントと異なるコンセプトで開催された。“ビズウィーク”という言葉が追加されたことからも想像できるように、B to B的なイベントとなった。具体的には、自動車メーカーとスタートアップが出会い、共創のきっかけとなる場を意識したイベントになった。 【画像】エバーブルーテクノロジーズの「除雪ドローン」のより詳細な画像を見る そんな「ジャパンモビリティショービズウィーク」のスタートアップエリアには、本当にさまざまな企業がブースを構え、自社のテクノロジーや特徴をアピールしていた。そのなかで、メカニズムとして非常にユニークと思える小型モビリティを見つけたので紹介したい。 それがエバーブルーテクノロジーズのブースに展示されていた「除雪ドローンFシリーズ」。名前からもわかるように、除雪機能に特化したドローンだ。 ドローンというと、空中を飛ぶカタチを想像しがちだが、水中ドローンや水上ドローンといったカテゴリーも存在する。いずれにしても、プロポなどによる遠隔操作と自律的な安定性を併せもっている無人モビリティをドローンと称しているのが現実といえるだろう。 この除雪ドローンを開発したエバーブルーテクノロジーズ社も、もともとは水上ドローンで経験を積んでいる企業であり、そこで得た知見を活かして、2022年から無人自動除雪機の開発に着手したという。 降雪地域において除雪というのは欠かせない行為だが、高齢化社会の進行に合わせて最低限必要な除雪でさえ実施できない世帯が生まれているのはご存じのとおり。そうした社会課題を解決するソリューションとして、無人かつ自動で玄関から通りまでを除雪できるような小型機を開発することになったわけだ。
除雪とは縁遠いようなスタイリッシュなルックス
それにしても「除雪ドローン」というマジメでシンプルなネーミングとは裏腹に、遊び心あふれるルックスは印象的。ロボットアニメに出てきそうでもあり、またミニ四駆ようでもあるカウルは、自由自在・縦横無尽に雪のなかを駆け回るシーンを想像させる。 しかもメカニズム的にも非常にユニークなのだ。除雪という目的から走破性は重要で、そのために四輪独立モーターによる4WDとなっている。定格250Wのモーターを4つ使っているので車両としては1000Wの出力をもつことになる。シャシーはパッシブ的に中央部分でねじれる構造の「ローリング・リジッド・フレーム」。いわゆるステアリング機構はもっていないが、左右のタイヤを逆回転させる「スキッドステアリング」を採用、その場で旋回することも可能なくらい小まわりが利くようになっている。 こうしたメカニズムは、雪のなかだけでなく、段差のある斜面でも十分な走破性を発揮するという。除雪ドローンでは、雪を推し出すためのブレードが標準装備となっているが、ブレードを外して異なるアタッチメントを使えば、整地や草刈りなどにも活用できるということだ。つまり、工事現場や造園業といった働く現場で使える可能性もあるというわけだ。 まずは、プロポによる遠隔操作タイプからのローンチとなるが、将来的にはセンサーやAI機能を追加することで、自動機能タイプに進化させることも計画されている。そうなれば設定した範囲内を除雪、除草するといったことも可能になるだろう。大いに期待したい。 ところで、こうした小型モビリティに興味がある人であれば、定格1000Wの除雪ドローンは、どんな車両カテゴリーに入ってくるのか気になるかもしれない。二輪でいえば定格1000Wは原付二種相当(原付一種は600Wまで)となるほどパワフルなスペックだからだ。 とはいえ、エバーブルーテクノロジーズ社の除雪ドローンは、最高速度が6km/h以下に設計されている。また、サイズ的にも全長1.11m・全幅0.65m・全高0.60mと非常にコンパクトだ。これまた詳しい人であれば想像できるように、この速度とサイズから、除雪ドローンは電動くるま椅子と同等の扱いとなる。すなわち歩道を走ることができ、玄関まわりを合法的に除雪することができるハードウェアになっているのだ。 なお、除雪ドローンFシリーズは、絶賛先行予約受付中。想定価格は遠隔操縦モデル、ブレード有で98万円(税別、送料別)。先行予約限定100台で88万円となっている。
山本晋也