「本当にあった」に学ぶ、トレッキングの撤退ラインとは? 突然の落石「北穂高岳登山」
状況に応じてコース変更をするということ
通常、登山は、事故につながらないように事前に現地のことを調べた上で綿密な計画を立てて、基本的にはその通りに行動します。そして、何か不測の事態が起きた場合、柔軟にコース変更ができるよう、あらかじめ「エスケープルート」を設定しておくものです。 このときは、ソロでふらっと入山したこともあり、ざっくりした計画書は提出していましたが、「この地点に何時までに着けたらここまで行こう」というような割とフレキシブルな計画でした。 (まだコロナ前で、山小屋の予約が必須ではなかった頃のことです。現在では、どこの小屋も、基本的には予約が必要。現在は、こういうアバウトな計画での山行はしにくくなっています。)
所要時間に余裕を持たせるには
登山アプリにしろ、登山地図にしろ、表記されているコースタイムは、あくまで目安です。自分がそのタイムで歩けるかどうかはわかりません。アプリによっても、山域によっても、書かれているタイムはいろいろ。 日ごろから、使っている登山地図(またはアプリ)のコースタイムと、自分が無理せず歩けるタイムを常に比較しておくようにすると、初めてのルートでもおよその目安がわかるようになります。 山では、想定外のいろんなことが起きるものです。それも含めて楽しめるように、余裕のある計画を立てて、安全に登山を楽しみましょう。 何かの事情で、予定を変更して想定と違うコースを選択する場合、考慮しなければいけないことは、そこでもまた〝想定外〟が起きる可能性もあるということ。 この事例の場合、エスケープで下った白出沢は、筆者は既知のコースだったのですが、単に「近そうだから」という理由でエスケープすると、逆に困難な状況になってしまうことだって考えられます。 基本的には、エスケープルートも、状況を把握したうえで想定するべきだと思います。しかし、初めて行く山域の場合は、メインの予定ルートも、エスケープルートも、すべて初見ということになるので、下調べをしっかりしておくことと併せて、時間的な余裕をしっかりとみておくことが、安全のためには必須ではないでしょうか。
根岸真理